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【腐向け】うつたか

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いつもの高崎との帰り道、喉がヒリヒリとする感覚に軽く咳をすると、心配そうに高崎が覗き込んでくる。
「大丈夫か? 風邪?」
「ん、ちょっと喉に違和感が、ね。今日は大事を取って早く寝るよ」
「それがいいな」
 気を遣っているのか、高崎は僕の手から書類の入った鞄を取り上げた。
「何、高崎が僕の代わりにそれやってくれるの?」
「まさか!」
 そこは嘘でも頷くところじゃないのか?と、素直すぎる高崎に苦笑してると
「でも、お前これがあると無理しそうだからなぁ」
 そう言って高崎が手元の鞄に視線を落としたので
「しないよ」
 高崎と違って自分の体調管理くらい出来る。そう告げてやると「ちぇっ」と言って高崎は僕の一歩前を歩き始めた。高崎が頭の後ろで腕を組んだので、そこでゆらゆらと揺れる鞄を見ながら歩く。ふと高崎が何か呟いたが、耳に届かなかったので聞き返した。
「オレたちってさ、路線だろ。なのに人間と同じなのがめんどくせーなって」
 腹が減ったり、怪我したり、疲れたり、風邪を引いたり。睡眠を取らなければフラフラするし、人を轢けば悲しい……。そんなことを列挙していく高崎に「そうだね」と相づちを打ってそれから、
「繁殖する必要がないのに、生殖器があったり、精液が出来たりとかね」
 高崎の足がぴたりと止まった。
「おま、それ……」
「だってそうだろう。あれはヒトが繁殖するのに必要なモノで、僕らには基本必要がないんだから」
 顔を赤く染めた高崎の顔を覗き込む。
「高崎は必要?」
 その時何故だろう、高崎は必要ないと言うのだろうと思っていた。だから鞄を抱えるようにして俯く高崎の口から小さい声で、「必要、だ」と言った時、思わず自分の耳を疑ってしまった。
「え?」
「だって、オレが、お前と、繋がれるのって、あの時しかない、から……その」
 しどろもどろになりながらも、それでもはっきりと言った高崎を抱き締めたい衝動に駆られる。僕と繋がりたいと高崎は思ってくれている。その事実が素直に嬉しい。
「参ったなぁ。高崎ってば、僕は今日早く寝るって決めたのに、僕と繋がりたいだなんて」
「ば、ばっか! 別に今日って訳じゃっ!!」
 なのにどうして茶化してしまうんだろう。真っ赤な顔でそっぽを向いた高崎の手を引いて強く握る。すぐに同じくらい強く握りかえされた。
「あー、あのさ」
「ん、なあに」
 きっと高崎の言いたいことは、僕が言いたいことと同じだろう。
「人間と一緒も悪くねーよな」
「そうだね。えっち出来るもんね」
「そ、それだけじゃねーんだからな!」
「ふふ、分かってるよ」
 人と同じだからこそ
「好きだよ」
「オレも宇都宮が好きだ」
 そう言えるのだから。
作品名:【腐向け】うつたか 作家名:aqua*