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日本と

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「……なぁ」

オランダは布団に包まったまま動く気配を見せない日本に小さく溜息をつき、声をかけた。部屋の主の小さな返事を聞きながら部屋の中へ視線を巡らせる。日本の部屋は、昼間というのに障子が閉めきられており、ただでさえ湿度の高いこの地の気候と相まって、室内の空気は体に重く纏わりつくような水分を多分に含んでいて心地良いとはお世辞にも言えない空気だった。

「日本、ここ開けてもえぇか?」

ひきこもってしまった日本が、日光に当たるのを嫌がっているのは分かっているが、それでもこの空気に耐えきれずオランダは立ち上がり一番近くの障子に手を掛けた。

「い、いやです……」
「あんなぁ……お前に付きおうてたら俺も病んでまいそうや」
「えっ」

布団から少し顔を出した日本は目を丸くしオランダを見上げた。
その顔には、てっきり、いつものように外交的になれ。と、お説教されると思っていたと書かれている。オランダは、控えめにだが、日本に聞こえるように溜息をつくと日本に向き直った。

「日本、ここが開くんは飯の時と俺が来たときくらいやろ」
「え、えぇ……そうですね、それくらいです。」
「換気しなさすぎや。お前さんはずっとここに居るし、気ぃつかんかもしれん。けどな、ここの空気……めっちゃ悪い」

言いにくそうにしながらも、きっぱりと言い切ったオランダは、日本の返事が返ってくる前に障子を開け放った。その一か所だけでなく、他の場所の障子も開け放っていく。

「あー、えぇ風入るやん」

開けた直後から、柔らかな風が室内を吹き抜け、薄暗かった室内にも光が満ちた。日本の部屋にいると陽が入らない為、時間感覚が狂いがちだが、この日の高さを見る限り来た時からそう時間が立っているわけではなさそうだった。

「う。うう……オランダさん、早く閉めてください……」

気持ちよさそうに眼を細めるオランダとは対照に、日本は、今にも死にそうな悲痛な声を上げて部屋の隅に逃げた。布団を被っていても日本の小柄な体がぶるぶると震えているのが分かった。

「……日本」

呆れ半分、面白半分でそうっと日本に近づいたオランダは勢いよく日本から布団を引き剥がした。そのまま障子の向こう、陽が煌々と差し込む廊下へと布団を投げ飛ばす。

「何するんですか!」
「布団も干しね。そういう習慣やって聞いたけぇね」

小さく嗚咽を漏らした日本は、すべてを取り上げられてしまうと渋々と言ったふうに立ち上がり部屋の中央へ戻った。
「今日限りですからね」

着崩れた着物を直しピンと背筋を伸ばした日本は、今までとは別人のようにキリっとして、口調までも変わった。その変化に、口の端に笑みを浮かべたオランダは小さく頷いた。それでこそ、俺の惚れた日本だと。


2010/07/01
作品名:日本と 作家名:ツムラ