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ちょこ冷凍
ちょこ冷凍
novelistID. 18716
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コペルニクス

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「阿部くんって、同性にモテるでしょ?」
 唐突な問い掛けに、ビクリと肩を竦ませたのは隣にいた栄口だった。
「……どういう意味っスか?」
 内心の動揺を出来るだけ隠して質問の意図を尋ねると、目の前の相手は変な意味じゃないよ、と笑う。
「体温が低い人って同性から嫌われないってのがあたしの持論でさ」
「は?」
 言っている意味が分から無いことで警戒心はますます強まり、年上だと言う事も忘れて乱暴な聞き返し方になってしまったが、相手は咎める事もせず、むしろ小ばかにしたように鼻で笑っていた。
「言い方が悪かったね。体温って言っても平熱が低いとかそういう意味じゃなくて、身に纏う空気感とでも言えばいいのかなぁ。そういうのが涼しげに見えるんだよね」
 愛想が悪いと言われる事は多々あるが、そんな表現をされたのは初めてだ。
「例えばさ、田島くんって言ったっけ? あの明るい小柄な子。ああいう体温が高そうな子は華があって目立つ分、敵も作る」
 あさっての方を向いて、田島の顔を思い浮かべていたらしい。それから、わざとらしくメガネのフレームを人差し指で上げる。
「阿部くんみたいなタイプは爆発的な人気は出なくても、同性からの支持率は高いんじゃない?」
 自分で言うのもなんだが、田島より人望があるとは思えねーよ。
 困惑しているオレを他所に、得意気な表情をした発言者はどう? 当たってる? と栄口の方を向く。
 急に話を振られて再び挙動不審な反応をした栄口は、そうですね……とオレを一瞥してから続けた。
「阿部はこう見えて、野球が絡んだ時だけは熱いんスよ」
 だから結構敵は多いと思います、と愛想笑いで答え、更に何か問いかけられそうになったのを察したのか部室に忘れ物をしたので、と逃げるように去って行った。
 何だよそれ。
 この場にオレを置いて行った栄口にも、その状況を作り出した目の前の相手にも腹が立ってきて不機嫌さを隠せなくなり、失礼します、とだけ言い残して栄口の後を追った。

***

「もっと堂々としてろよ。変に勘ぐられたら面倒じゃねーか」
「しょうがないだろ! オレ達の事知ってるのかと思ってビックリしたんだから!」
「うるせー、喚くな。大体お前はちょっと美人だとすぐデレデレしやがって……」
「へー。阿部も美人だと思ってるんだー」
「だからってお前みたいに態度を変えたりしねーよ」
「阿部さー、先輩に向かってあれはないんじゃない?」
 自転車での帰り道、さっきの出来事を咎めたら口ゲンカになってしまった。
 不毛だとわかっているのに止まらないのは、普段なら上手くかわしてくれる栄口が珍しく突っかかってきたからだろう。
 たまにはオレが引いてやるべきなのか?
「……お前と違って、オレは女に興味ねーから」
「ふーん。あの人は阿部に興味津々だったみたいだけどね」
 精一杯の譲歩の言葉にも、尚も不貞腐れたままの栄口はこちらを見ようともしない。
 自転車を漕ぐ足を止め、どうすりゃいいんだよ、とハンドルに置いた両腕に頭を乗せて項垂れれば、先を行っていた栄口が戻って来て隣に並んだ。
「阿部」
「オレ、敵多い?」
 せっかく拗ねたんだ。恥ずかしいついでにさっき引っかかった捨て台詞がどういう意味なのか、説明してもらおうじゃねーか。
「んー……正直な話、いなくはないと思うよ。無愛想だし言葉キツイから、誤解される事もあるだろうし」
 そう言うと、ポンポンと二回軽くオレの頭を叩いた。声のトーンはもう、いつもの穏やかさを取り戻している。
「栄口も?」
 顔を上げて栄口の方を見れば、ようやく目が合った。
「ん?」
「栄口も、オレに腹立つ事あるのか?」
 例えば今とか、とじっと見つめたまま問えば、一瞬目を丸くしてから柔らかく笑う。
「阿部でもそんな弱気になることあるんだ」
「……栄口が絡んだ時だけな」
 さすがに目を合わせては言えなかった。
 照れ臭くてどうしようもなくなり、オレは再び自転車を漕ぎ出す。
 栄口がすぐに追いついて来れるよう、いつもよりスピードを落として。
作品名:コペルニクス 作家名:ちょこ冷凍