選ばれたのはどっち?
恋愛的な感情で気になる少女と、幼な馴染みで親友の少年。
どちらも大切で、でもどちらか一方を選ばなければならないとしたら―――。
「例えば吊り橋。紀田くんと園原さんが落ちそうになってたとして、お約束通りどちらか一方しか助けられない」
「…また随分ベタな例えですね」
「わかりやすいからベタなんだよ。…で、君はどっちを選ぶのかな?」
「僕の腕力じゃ、園原さんも持ち上げられないと思うんですけど」
「うん、俺もそう思うけど、そうじゃなくてねぇ、」
「そんなの、園原さんに決まってるじゃないですか」
溜め息混じりに返す声には、呆れた様子が滲み出ている。
え、そうなの? 悩む素振りもなかったよね、そんなあっさり決めちゃうんだ?
恋人か友人か、普通なら恋人を選ぶのがセオリーだろう。
だがまさかこの少年がそれを選ぶとは、正直なところ思わなかった。
なんの捻りもない回答に、臨也はわざとらしく溜め息を零す。
「即答なんだ? 可哀想な紀田くん」
「…そうですか?」
「だって、さっくり見殺しにするんでしょ。薄情な親友だよねぇ」
「言われてみれば、そうとも取れますね…」
そうも何も、それ以外にどう解釈しろというのか。
はっきり言えば少々興醒めだ。
「園原さんを助けたら、僕も吊り橋から飛び降ります」
だからきっと大丈夫です、とはにかむ顔を、臨也はまじまじと見返した。
作品名:選ばれたのはどっち? 作家名:坊。