うつくしいひと
僕がまだ小さいころ、日本、という国が存在していた頃、つまりルルーシュとナナリーが僕たちと一緒に暮らしていた頃、僕のまわりにはひかりが溢れていた気がする。
異国から来たちいさなおひめさまとおうじさまが僕のすべてだったと云っても過言ではないくらいに、僕は彼らが好きだった。彼らは僕にとって初めての慈しむべき存在だったのだ。
僕のあいした日溜まり。
それをただ守りたかった。ただ彼らを守りたかった。
彼は手を延ばすと消えてしまいそうなくらい綺麗で、きらきらしていた。僕のあこがれ、彼を見ているとあらゆる優しい感情が沸き出てくるようで、嬉しかった。どうしようもなく嬉しかったんだ。
君だって生きたかった筈だろう。逃げたくなんてなかった筈だろう。でも僕はもう君を解放したかった。
ただきみをまもりたかったんだ。
例えそれが身勝手な満足であろうと。君だって自分の死の勝手さを分かっていただろうに、それでも生きてほしいと君は言った。
「こころがいたい、血が出そうだ。」
「・・・ルルーシュ・・・、」
「お前にこんなことを言うのがひどくつらい、」
だけどお前が生きていかなければいけないように、俺はこの痛みに耐えなくてはいけないんだなスザク、そう言って微笑んだ君を僕は自分に刻み付けた。それは強さともなり弱さともなり、また傷痕とも証ともなり、僕の一部として死にながら生き続ける。
さいごまで君は、うつくしいひとでした。