金木犀のころ
ひるとゆうのあいだの酷く気怠い空気が車内には溢れていた。
建物の間から断続的に射す西日が更に眠気を誘う。そのきんいろが、隣にいるルルーシュの黒髪やら白い指やら彼を造形する輪郭のすべてを曖昧にしていた。このままこの綺麗なひとはきんいろに溶けてしまうんじゃないか。でもそんな漠然とした不安すら金木犀色のこのひかりに染まっていくのだ。そのひかりは僕のこころまでも浸蝕し、可笑しな希望を抱かせる。(僕さえも溶けてきっと溶け合ってひとつになれる)そんな確信にも似たものを静かな車内にそっと放った。君に届かなくても別に良いんだ。
ゆるゆると電車はまちへ向かっている。確かに前へ進んでいる筈なのに時間は止まっているようだ。これならどこまでも行けそうだね。君と一緒に。
ね、ルルーシュ、僕はたった今ゆめから醒めたみたい。