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香り香る

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(今日はなんか調子が悪い、な…)
しくしく痛む胸に少し眉を顰め、タクトは溜め息を吐く
──原因は分かっている。夢見が悪かったんだ

今も目を閉じれば、繊細に思い出す光景
掌を見つめ、きつく握り締める
だが、表に感情を表さぬよう、誰にも気付かせないよう絶えず笑顔を浮かべていた
それが逆に心配をかけていると知っていようとも(これは癖なんだ)

ただ、上手く笑えているかが気になるだけ
(そう、余計な心配はかけたくないんだ。只でさえ色々と背負っているのに…)
誰を指してなのか、深く追及ぜずに心の内で呟くと今日はやっぱサボるかな、と鞄を掴み外へと出るのであった



「…タクト…?」
学園に背を向けるタクトの姿に、怪訝に思い側にいたワコに声をかけようと振り向くスガタ
だが、分かってるとばかりに笑みを向けられ、すまない、と手を上げると相手の後を追う

気配を辿るよう、相手を探す
今日のタクトはどこか様子が変だった
花の香りを身に纏い、何時もと違うその儚げな姿は、目を離したら消えるよう(それはワコや、…僕にとって恐怖)

(どこだ…!)
いそうな場所に足を運ぶが、どこにも見つからない
ふと、海側に目を向けると、階段を上るタクトの姿が
(いた…!)
「タクト…ッ!!」

大きく響く声に驚いたようにぴたりと足を止め、こちらを振り向くタクト(だがその顔は逆光で見えない)
首を微かに傾げ、スガタ…?と、小さく零すその様子にますます不安を覚えた

「…どうしたんだ?今、授業中だろ?」
まさかサボりかな、とくすりと笑みを含んだような声に少し安堵する

「…タクトの方こそ、ここにいるってことはサボりだろ?
……どうした?」
こちらを窺い見る相手に、睨むように見つめながら徐々に近付く
すると、風が吹きスガタのところに花の香りが漂う
「…ッ」
思わず目を閉じ、強く香るその匂いを追い払うよう、首を振るスガタ
(頭がくらくらする…)
ふわり、その時タクトが何故か微笑んだような気がした

とん、と空を舞うようにタクトは階段から飛び、スガタの元へ降りる
(それは翼が生えているよう)
見えない羽根が二人を覆うように舞い散る光景が思い浮かび、思わず目を見開く

「…スガタ」
近くに寄ると、そっと手を伸ばしその冷たい指で頬に触れ、タクトは柔らかく目を細める

───ああ、届いた…
小さく呟くと、タクトはそれはそれは嬉しそうに笑みを零し、泣きそうな表情を浮かべた
ようやく見えたその表情にスガタは泣きそうになり、相手をかき抱く

何時もは慌てたり押し返そうとする腕はスガタの背に回り、安心したように息をつくタクト
相手に擦り寄り、もっと、というかのように、ぎゅうっと抱きついてくる

様子が違うことに、はたっと我に返るが離れず、安心させるよう抱き返す
(猫のようだ…)
満足させるまで、落ち着くまで腕の中で抱き、折角だから、と堪能する
(香る花の匂いは気になるが…。仕方がないな…)



────早く何時もの元気な姿に戻ってくれないと調子が出ないんだ
誰にもその姿を見せないようスガタはタクトを腕の中へと閉じ込め、ぽつり、と呟く
…しばらくして顔を真っ赤にして慌てる相手に楽しそうに、満足そうに微笑を向けた
(ほら早く落ちないと、話さないと…捕まえて逃がさないよ…?)





だが、抱き合う姿はいつの間にか撮られてたという
…油断することなかれ…?
しみじみと、そう感じた二人である

(いえい、と指を立てるワコたちの姿が後ろにあった)
作品名:香り香る 作家名:夜。