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戦場にて

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戦争、戦場表現等がございます。苦手な方は回避をお願いいたします。












ぜは、と荒い息を抑えきれないまま、ただその息を空へと放つ。
きん、きんと響く金属同士の擦れ合う音。
微かに鼻に付く火薬の臭い。
空を切り裂く銃の音。
舞い上がる土埃。

そのすべてが、隔離されたもののように感じる。

背中に感じる土の感触さえ気持ちいいと思ってしまうような最悪のシチュエーションである。
体中を蝕む痛みは、今自分の足の向こう側で全く対称的に倒れてるイギリスに付けられた傷か。
それとも国内で行われる戦争の傷跡か。
最早考えることさえ面倒だった。

全く、自分たちが戦争の前線に出て本気でやりあったところで決着がつくはずがないのだ。
何百年と昔から同じことを繰り返して、繰り返して。
毎回考えるのに自分たちは最前線に出てくることをやめられはしないのだ。
どうせ自分たちは死なない存在だ。
国同士で刃を向け合い、喧嘩したところで自分たちとは関係のないところで着々と勝敗はついていっているというのに。

こうして、刃を向け合うことに意味はなくとも。
それでもこうして、わざわざ痛い思いを何故しているんだろうな。

なんだか面白くなってきて、痛む肋骨をおして無理矢理ふふっと笑うと、「何笑ってんだ」と足下から声がした。

「やだ坊っちゃん起きてたの?今度こそ俺が止めをさしてあげようと思ったのに。」
「てめぇが起きてるのに俺が起きてないわけねぇだろ。それはこっちの台詞だ。」

お互い強がってはいるが、どうせお互いとも起き上がれさえしない状況だ。止めをさすなど口の遊びである。
あぁ、あんな細腕に肋骨をもっていかれるとは。
本当に見た目に反して腕っ節がいいんだから。

喧騒は鳴りやまない。
国という存在を無視して戦局はどんどん動いていく。
あぁ、こんな無意味な上司の権力争いみたいな喧嘩に愛すべき国民が。
こんなにいとも簡単に。

「お前、もうそれ以上喋んな。」
「やだ俺喋ってた?」
「お前が何考えてるかなんてすぐわかんだよ馬鹿。」

げしっと、足の裏を蹴られる。
身体を動かすのも痛いくせに、無茶してくれる。
そしてそんな僅かな刺激さえ体中に響いて、ぐっと少し涙が出そうなのを無理矢理抑える。意地みたいなもんだ。

「あー早く終わんないかな、こんな馬鹿みたいな戦争!」
「おま、それ国民の前で言うなよ絶対言うなよ本当に馬鹿だな脳みそまでワイン漬けになったんだなついに。」
「ちょっついにって何ついにって!」
「言葉の通りだ。」

声を出すのさえ辛い状況だというのに軽口の応酬だけは止める気にはなれなかった。
そうだ、久しぶりだなイギリスの声を聞くのも。
そうぼやり、とフランスは考えつつ。
つい、言葉が口をついて出てきていた。

「また、しばらく会えないのかな。」
「……ばぁか、今生の別れでもあるまいし。すぐ会えるだろ。講和の場なり戦場でなり。」
「そうなんだけどねぇ……」

あぁ、本当にこんな戦争、早く終わらないかな。

「それでも、寂しいと思うよ、俺は。」
早く、早く。
イギリスの家にふらりと立ち寄って。焼き菓子なんかを口実に家に上がり込んで。
イギリスのいれた上手い紅茶を飲んで。
珍しく晴れたロンドンを揶揄ったりとか。
そんな日常が。
これほどまで愛おしいなんて。

「言ってろばぁか。」

そう言ったイギリスの声が、いつもより優しかったから。
今はそれで満足だったけど。
作品名:戦場にて 作家名:なつき