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冬眠なんて如何

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臨也さんの苦手なものは平和島静雄や彼の双子の妹らの他にもある。何時も付け入る空白もなくて歯がたたず、どうしようもなく敵わないので戦う気力すら湧かない不戦敗に終わるのだというそれは、寒さ全般である。


ごちゃりと様々な色を混ぜた池袋の名物である、途方もなく激しい戦争は何時もふんだんに頻繁にと、そうそう起こる訳ではなかったけれど。
髪をきらきらしい色彩に染色した彼の目線が度重なる機会が増えるに比例し、回数が増加していくというほんの一寸ばかりの気のせいがする。どうやら向けられたのは、なにもよりによって災厄を嬉々と作るノミ蟲なんか、といった趣旨の哀れみらしい。

おっと、そこは自動販売機の軌道上だから危ないよ。
そう言われながら手を握られ腰を優雅にとられる。予告通りに驚嘆に値する速度の物体が真横を滑る。お礼をしても固く繋がれた手は離れていかない。
あれ、帝人くんの手すごく暖かいね。
と、ぽつり一言。思えば此処でのちの恋人の意識の中に居場所を正式に得たのだろう、何かと理由を捻っては絡み始めた時期と合致する。

そうしてキスよりも先に抱き締められて、告白よりも早く接吻が唇に落とされた。偶に逆じゃないでしょうかとからかえば、人の視線の行き先を誘導し溜息を引き出す美しさで誤魔化される。いくら非道と評されるひとであっても、年端もいかないこに色々したことは恥ずかしいみたいなので、ご自慢の美貌すら曇る。軽く弾む恥ずかしさをまたそぞろ隠してしまえと自身をそそのかしているようだが、首尾よく遂行していない状態にしてやったりと微笑む。

臨也さんには気を付けなければいけない人物の人口は手広い。自分の折角広めた友好関係とも被るので、正直こんがらがるのは面倒であるし放置するしかない。
今年も季節はやはり巡り、もうすぐ冬がくるのに、はて臨也さんは大丈夫だろうか。何のかんので辛くも乗り切っているので最悪には至らないだろうが。



冬は、人々の唇からもれる魂のような白く染色された息を眺められる点も好みである。肌を撫で通り過ぎる空気を感じてくれば、その季節の到来に機嫌はさくっと上向きになっていく。
僕にとっては過ごし易い季節に感じる冬の頃になれば、もこっと厚着しつつ暖房器具の充実した自室に誘拐さながらに招いては人肌にしがみつき、頬を擦り寄せてくる。それでもまだ足りないようで、温かい飲み物を補給する。しかしてまださむいさむいと連呼する。震えていたり、手を擦り合わせたり、抱き締める力を強めたりと心をなくした様子で必死に忙しい。
湯たんぽの代用品扱いが気に入らないが、夏には臨也さんの低体温っぷりを当てにして此方も冷えぴたとしているので、文句を口にのぼらせずに黙って我慢している。抱き締められるのは、体温を共有するのは嫌いではないのだし。ただし言えば調子に乗るのが臨也さんというひとなので、小さな沈黙を守る意地くらい張ることは許されると思う。
足りない処を補い合っている、こんな仲が相思相愛に見えたら嬉しいなと思ったり、なんて。たった一つの、特定の季節を延長することが出来ないのが残念。

温度が愛の代弁をしてくれているので、臨也さんの持ついい香りを堪能するという最重要事項に、ぴったりとくっついて専念する作業に意識を戻した。
作品名:冬眠なんて如何 作家名:じゃく