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鉄人勝負

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鈍い音を立てて金属が触れ合う。ぐっと力を込めれば横へ薙ぎ払われ間合いを広げられたのにヴァリラは小さく舌打ちをした。クリュウは手にした武器を構えたまま動かない。
 今度は槍を突き出してみる、が、それも武器で受け止められる。幾度か連続で打ち出し、隙をうかがうがクリュウのガードはなかなかのもので構えたその武器も良い仕上がりのものと言えた。
 だからこそヴァリラは腹立たしく再度踏み込むと至近距離から武器を振り下ろす。それすらガキンと鈍い音と共に受け止められ、すぐ傍でクリュウがにいと笑ったのに苛立ちを隠さないまま後ろへ飛んだ。
 ひゅう、と強い風が音を立てて二人の間をすり抜ける。金色の髪が風に揺らされて視界に入るのに舌打ちをすると彼は髪を指で視界から外した。その手を武器に添えて持ち直すとぴたりと動きを止める。
 お互いの武器が届かない間合いに二人は睨み合う。どちらかが動けばその時勝負は決まる。
 そう思っていたその時、先に投げたのは金色の髪の彼だった。
「ああくそ、やってられるか!」
「ヴァリラ?」
「貴様、いいかげんにしろ!」
 びっと槍を鼻先に突きつけられて思わずバックステップで間合いを広げる。彼はぎりぎりと音がしそうなほどにクリュウを睨み付けていた。
「どうしたのさ」
「どうしただと?よくもそんな口を利ける――そのおたまは何だ!」
「これ?武器だけど」
 手にしたおたまをくるりと回転させる。その姿にヴァリラはふざけるな、と怒鳴った。
「ふざけてなんかないけど…」
「ほお、百歩譲ってそれが武器と言うのは構わん。だがな、先ほどから打ち込んでこないのは何故だ」
「いやそれは」
 口ごもるクリュウにずかずかと近づくと槍の先をクリュウの頬に押し当ててヴァリラは引きつった笑いを浮かべた。
「貴様はいつもいつもおたま、おたま、おたまだ!おたま以外に武器は持ってないのか!」
「違うよヴァリラ!これはただのおたまじゃなくて、鉄人の」
「変わらん!」
 左手で拳を作り、躊躇なくそれはクリュウの頭に落とされた。
 ひい、と声を上げて両手で頭を押さえる。その手からヴァリラはするりとおたまを抜き取るとぽいと後ろに投げ捨てた。
「あ!」
 慌てて手を伸ばすが遅く、それは噴水の中にぽちゃりと落ちる。
 後で拾えばいいけど、とクリュウが思った時、ヴァリラの低く唸るような声が耳に届いた。
「今後一切、そんなくだらない武器で戦おうなどとしたら…わかっているだろうな?」
 絶縁とも取れる言葉にクリュウは投げ捨てられたおたまのことも忘れて慌てて頷く。何度も何度も縦に首を振り、絶対にしませんと固く誓ったのにヴァリラはならばいい、とようやく槍を下ろした。
「では明朝、再試合だ。いいな?」
「はい!」
 わかりました!と叫ぶ少年が自分たちの目指していた鍛聖なんだろうか。見学をしていたサナレとラジィは顔を見合わせると大きく溜息を吐いた。



 そして明朝。住人たちが動き出したばかりのそんな時間に二人は向かい合っていた。
 くるりとヴァリラは手にした槍を回す。クリュウはそっと背後に手を回すと、ぐっと柄を掴んだ。それを前に持ち出そうとして、待て、とヴァリラに静止される。
「ひとつ、言っておく」
「うん」
「ハンマーを出したら、次は無い」
「えええええ…あ、いや、だよねーハンマーは無いよねそんなの出すわけないじゃないか!」
 やだなぁーははは、そう口にしながらクリュウの瞳が彷徨っているのにヴァリラは深く深くため息をついた。何故こんなのがライバルなのかと、今更になって後悔し始めている自分から目をそらしたかった。
「ええと、ごめん、ちょっと武器忘れたから取りに戻ってもいいかなぁ?」
「…行け」
「うん!」
 踵を返すとダッシュで町を駆け抜けていく。あーあ、とサナレとラジィも大きく溜息を吐いた。
「次は何で来るかなぁアニキ」
「…まぁ、今回ばかりはまともでしょ」
 腕を組みその場でじっと立つヴァリラの背後に揺らめく闘志はそうとうなものだ。あれは怒りだなぁ、とサナレはぼんやり考えた。
「あ、もう戻ってきた!」
 がしょがしょと音を立ててクリュウが戻ってくる。おーいと呼びかけながら大きく振るその手にまともな武器が握られていたのに、3人は感動さえ覚えたのだった。
作品名:鉄人勝負 作家名:なつ