壊れた世界でふたりっきり
すきだよすきだ、あいしてる。
だから全て、何もかも残さず捨ててしまえばいい。
目を閉じ耳を塞いでいいんだ。俺が転ばないように手を引いてあげる。
君はただ指先で俺を感じていればいい。
皮膚感覚を残して全て捨てるといい。
それはとても幸せなことだ。
君の望まぬ非日常を上書きしてあげる。
嬉しいだろう?
この世界に君が求めた絶対的なものなんてないんだ。
あぁ、そんなに絶望的な顔をしないでくれ。
大丈夫、俺は君が欲しがる姿でいてあげる。
壊れて砕け散ったとしても俺の想いは変わらない。
そうそう、純粋なんだよ。
もっと褒めてくれていい。
許されないねえ? いいじゃないか。きっと誰もが君のことなんかどうだっていんだ。
俺は違うよ。俺だけは違うよ。
安心して、君にとってここが廃墟の街ならば俺にとってもそうだ。
廃墟に住む苦痛も君がいるからプラマイ、プラス。
笑って頼って甘えてくれて構わないよ。
俺の世界の幸福量が増していけば君に返還されるだろうからね。
あ、そっか。欲しいのは幸せじゃなかったか。
痛いのと優しいのはどっちがいい?
え、そりゃあ、ちょっとワガママ。
悪い悪い。俺が甘えてって言ったんだもんね。
いいよ、大丈夫。
叶えてあげる。
とりあえず今はどうしたい?
荒縄、手錠に鎖と目隠し、猿ぐつわ。
亀甲縛りより俺は蟹とか海老とかの方が。
まあ習うよりは慣れろだよ。
癖になっちゃうだろうね。
うん。その時は一緒だよ。
なんでって、まったく分からない子だなあ。
愛だよ愛、ラブ。
疑わしそうな顔をして失礼しちゃうよ。
暇人扱いはこの際、甘んじて受けようかな。
でも、俺の愛は君の世界より大きいそういう話だ。本当だよ?
信じようと信じまいと変わらないね。
この世もあの世も俺たちにはもう関係ない。
そう、できない。
ここで、この場所でずっとずっと二人っきり。
崩れ、壊れ、ぐちゃぐちゃになっても、二人なら幸せだろ。
・・・・・・かわいくないこと言うなあ。
そんなところも好きだよ。
でも、今はダメでしょ。はい、やり直し。
うんうん、いいね。耳に心地いい。
俺は優しいんだからさ、優しくしてよ。
またまた冗談キツいなあ。
ともかくさ、選択肢がないと嘆くならあげるから。
上と下、どっちがいい?
好きだねえ。あぁ、別に悪くないよ。いいんじゃないの。
俺? 俺は・・・・・・君が好きだよ。
答えはこれで十分だろ。
そんな顔されるともっと酷いことしてやりたくなる。
あはっ、怒るとこそこじゃないでしょ。
いくらだって叶えてあげる。
繰り返すけどね、俺は君が好きなんだよ。
君が一瞬たりとも信じなくても変わらずにね。
信じてないよ。
嫌いでしょ? 嘘も本当も何もかも。
大丈夫。二人っきりだから。俺と君以外なにもない。
目を閉じ耳を塞いでいけばいい。
自己防衛は悪いことじゃない。
君が望む世界をあげよう。
君が得られない世界を俺があげる。
作品名:壊れた世界でふたりっきり 作家名:浬@