ツイッタお題まとめ
10.シュミエリ
ツガイの今日のお題は『景色』『コーヒー』『残業』です。 http://shindanmaker.com/14509 #twnv_3 ということで^^
「お疲れさまです」
すいと差し出された白い湯気のたゆたうマグカップは、シュミットが愛用しているものだ。
大きめのサイズをあえて使っているのは、コーヒー党の自分がたっぷりと大好きなそれを味わえるようにと幼なじみが選んでくれたからにほかならない。
「Danke.」
受け取ると、エーリッヒが小さく微笑んだ。
「遅くまで、お疲れさまです」
「お前こそ」
「゛残業゛は慣れっこですよ」
「それもそうか」
一日の練習の結果だとか、マシンのデータだとか、はたまたライバルチームのデータだとか。
そういうものをまとめるのは大抵二人の役目だ。
チームのトップであるミハエルには、些事に患わされず、ただレースに集中してもらいたいという気持ちの表れでもある。
「データ、まとまりそうですか?」
「まだ少しかかるな」
お前の方は、とシュミットが顎を尋ねると、エーリッヒが肩を竦めた。
「僕の方も、まだまだです」
「情けないな、二人して?」
「そうですねえ」
目を合わせてくすりと笑う。
ふと窓の外を眺めると、大きなガラスの向こうに月明かりの降る夜景色。
「今日は満月か?」
こんなに明るいなんて、尋ねると、
「そうかもしれないですね」
答えるエーリッヒが空を見上げる。
そっとガラスの表面に触れたエーリッヒの指が、冷たそうにしたのを見て、シュミットは腰を上げた。
コーヒーで温まった指を、そっとエーリッヒのそれに重ねる。
ひやりとした感触、さらさらと滑るような滑らかさに出迎えられて、心地よさに目を細める。
「残業も、悪くないな」
「え?」
「こんな景色と、お前がつくなら」
「……コーヒーも、でしょう?」
「違いない」
手のひらと指だけで触れ合ったまま、並んで見上げる夜空には、丸い月がひとつ。
明るいそれは二人を照らすためであるかのように優しく輝いている。