ツイッタお題まとめ
6.ヘスアド
ヘスアドの今日のお題は『予測』『男』『チェス』です。 http://shindanmaker.com/14509 より。
「相変わらず強いな、勝てたためしがない」
ソファの背もたれに思い切り背中を投げ出して、アドルフは文字通り両手を上げた。
いつも降参のポーズに気をよくしたわけでもないだろうが、ヘスラーはにこにこと笑った。
「ここで、こう、」
言いながら、チェス盤に手を伸ばす。
アドルフはその手元を覗きこんだ。
負けて悔しくないわけではないが、負けた理由を考え分析するのは嫌いではない。
気付かなかった視点や新たな攻め方を発見できるからだ。
「ここで、こう動かせば、」
「ああ、本当だ」
「じゃあ、もしこうしたら、どうなると思う?」
「………それはよくない手、かな」
「正解、ここを攻められるとキツい」
毎晩のように手合せをしていれば、ヘスラーには勝てずとも、多少は腕が上がるというものだ。
先の読み方というなのも少しは分かってきた。
頷いているとヘスラーが視線を盤から上げた。
じっと見つめられて、アドルフは首を傾げる。
「なんだ?」
「腕を上げたよな」
今ならシュミットともいい勝負ができるんじゃないか、とそんなことを言うものだから、アドルフは肩を竦めた。
「やめておく」
負けても悔しいし、うっかり勝ちでもしたら、それはそれで後が面倒な気がする。
アドルフの内心を知ってか知らずか、ヘスラーが機嫌よく口元を緩めた。
「………?」
いったい何を喜んだものかと不思議に思ったのだが、ヘスラーの次の一言でその理由が判明した。
「じゃあ、」
「うん?」
「もうしばらく、俺の独り占めだな」
「何を」
すいと、先程まで駒を鮮やかに操っていた指先がこちらに向いた。
「アドルフを、」
独り占めだ。