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ノーカウント・プロポーズ

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ノーカウント・プロポーズ



「プロポーズだと良かった?」

滝沢くんはそう言って、するりと私の髪の毛に指先を通す。
問いかけたのは私なのに、頷けばいいのか分からない。頷きたいのか分からない。
私はあの時の出来事を、どう捉えているのだろうか。

「これ渡して母親に会いに行け、か。確かに、プロポーズとも取れるよね」

滝沢くんが手を伸ばすと、ゴールデンリングが胸元で揺れる。
服越しに触れられたせいで、とくり、鼓動が逸っていく。

滝沢くんとニューヨークから帰国したあの夏の日。
私は彼と別れる時、彼からゴールデンリングをプレゼントされた。
みっちょんとおネエにその話をしたら、プロポーズみたい、と言われて。
意識せずにはいられなかった。
私は気付いていなかったけれど。
もし、滝沢くんがそうだったら。
そう考えたら、ドキドキが止まらなくて、知りたくなってしまった。
どういうつもりだったのか。

はあ、吐息が零れる。
滝沢くんはゴールデンリングから手を離すと、ゆっくりと私を見下ろした。

ドキン、ドキン。高鳴る胸が訴える感情が読みきれない。
これは、期待なのだろうか。問いかけたのは、知りたいから。
…なら、私はどうして知りたいと思ったの。

「咲、」

滝沢くんの唇が、優しく私の名前を紡ぐ。
顔を上げて、私は滝沢くんを見上げる。
澄んだ黒瞳が煌いて、私を捉える。

「ごめんね」

ずきり、胸が、痛くなった。
ううん、と首を振ろうとしたけど、上手く動かない。
私は強張ってしまった表情のまま、ただ、『ううん』と呟く。
プロポーズだと良かったのだろうか。分からない。
でも、たぶんこれは否定だ。
プロポーズじゃなかったんでしょう?
少なくとも彼にそのつもりはなかった。
否定されたことが、まるで私とそうなることを望んでいないみたいに聴こえてしまって、苦しくなる。

そっと視線を落とすと、滝沢くんの手が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ちゃんと指輪くらい用意するからさ、あれはノーカウントにしておいてよ」

え? 零れた声は膝の上に落ちて、消える。
告げられた言葉の真意はなに。もう一度、顔を上げる。

「どう?」

ふ、と顔を寄せられて、心臓が壊れていく。
リズムを乱されたまま、私は目の前にある滝沢くんの笑顔に思い知る。

滝沢くんも、私を想ってくれていることを、知る。

だから、震える唇で伝えた。


「ずっと前から、滝沢くんは私の王子様だよ」


だから待ってる。その時を待っていてもいいんだよね。

もしかすると、出逢った時から彼は私の王子様だったのかもしれない。
それは流石に口に出せなかったけれど、熱を帯びた頬に滝沢くんの指先が滑る。
少しひんやりと長い指に、恥ずかしさはそのままなのに、身体から余計な力が抜けていく。

滝沢くんは困ったような顔で、照れくさそうに笑った。

「ありがとう、俺のお姫様」

そう言って、あっさりと私の唇に自らの唇を重ねる。
一瞬だけ、だけど。それが逆に、私のこころを暴いていく。
もっと滝沢くんと一緒に居たい。ずっと一緒に。いつまでも傍で。

「咲、顔赤いよ」

からかうようにそう言って、頬を突く。
気恥ずかしくて目を逸らしたかったのに、滝沢くんはそれを許してくれなかった。

■END
お付き合いいただいて、どうもありがとうございました!
( 2010.12.04. )