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鮮やかな想い

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「…『今日はいい』……ふーん…」
水を掬ってはその流れる様を見て目を細め、むすっと、どこか不機嫌そうに呟くタクト
その様子を横目で眺め、スガタはそっと微笑む

だが、濡れた事により、タクトのいつも跳ねている髪が大人しい様子はどこか──そそる(これを言ったら逃げられそうだな)
雫が跳ね、淡く色付く肌を伝い落ちる姿に手が伸びそうになるが、上を向いて耐えた


「…何?嫉妬…?」
「…な…ッ ま、まさか!」
熱を逃がすように問いかけると、ばっと振り向き勢いよくタクトは否定する。が、その頬は赤く染まり説得力はない

(いい加減認めればいいのに)
そんな内心をおくびにも出さず、「そう」と微笑して納得したふりを
だがそれを伝えてしまうと‘何か’が壊れそうで、そのままを維持(結局は、僕も臆病、か)


「そうなの!…ただ……」
「ただ?」
その先を言わないタクト
瞳を伏せ、首を振り「やっぱ何でもない」と仄かに笑む
どこか儚い表情に、離れていく何かに気付くと押し込んでいた‘想い’が溢れ出てしまった
それを放さぬよう手繰り寄せ、口に弧を描く(もう、迷うのはやめよう)

「…気になるじゃないか。途中で止められると」
目をひたり合わせると近寄り、覗き込む
誤魔化しは許さない、という風に強い視線で見つめると相手を引き寄せ「…ねえ、教えて?」と、耳元で低く囁く

「……ッ…な、何でもないったら何でもない…!」
相手を押しやると、ばしゃっと逃げるように水をかけ「で、出る!」と慌てて立ち上がろうとするが、

「タクト」
有無を言わせない音に止められた
今まで逸らしていた曖昧な‘何か’を揺さぶられた事に唇を噛み締め、息を一つ吐くとゆっくり振り向く
(その顔は泣きそうだ)

「………嫉妬した────て言ったらどうするの…?」
最後は小さく聞こえるかどうかの声で呟き、じっと見つめる
これで何かが壊れようとも、僕は…信じたい──そんな気持ちで、だが不安一杯でいるとスガタがふと、ふわり微笑んだ

その安心したような、見た事もない笑みに目を見開き、視線を離せない

「──ああ、やっと捕まえた」
心底嬉しそうに零し、手を伸ばすと頬に手を当て、柔らかく目を細める
緊張からかタクトのその何時もより冷たい体温に少し眉を寄せ、腕を下ろすと腰に手を回し再び引き寄せた

「……ッ」
驚きに息を呑む音が聞こえ、くすりと笑む
暖めるかのよう抱きしめると小さく息をつく振動が伝わり、そっと目を伏せ「…嬉しい」、とぽつり呟く

「え…?」
「嬉しいんだ。…腕の中にタクトがいる」
逃げない事が、手が届く事が…、とより強く抱きしめると動きに、ぱしゃりと反応して水が波立った(それはまるで二人の心情)

「あの、な…。
……羨ましかったんだ…スガタに気兼ねなく触れられることが…。
あはは、可笑しいよな、僕。なんでこんな気持ちになるんだろう…」
しばらくすると決心したように、どこか諦めたようにタクトは小さな声でぽつぽつと紡いでいく
決して見せないよう相手の肩に顔を伏せながら。恐らく泣きそうな顔で話しているのだろうと思うと胸が苦しい

「顔、見たい。見せて?」
懇願するよう頭を数回撫で力を緩め、少し離れ窺い見る(だが腕は放さない)
恐る恐る顔を上げるタクト。予想通り瞳は潤み、頬は赤く染まっていた
恥ずかしいのか、どんな表情をしていいのか、軽く混乱しているのだろう
睫を震わせ目を伏せるその姿は、壮絶な色気を醸し出す(反則、だ…ッ)

「スガ、タ?…やっぱ呆れた…?」
襲いたくなる衝動と闘っていたため無言のスガタにタクトは不安そうに見つめると離れようと体をそっと押した
相手の行動に我に返り「あ、ごめん。見惚れてた」と少し誤魔化し、だがはっきり答えると、
「…へ?」
タクトは、ぽかんと口を開け目を見開く

「うん、お風呂は危険だね」
意地悪そうな顔でにっこり微笑み、ハテナマークを飛ばす相手にさっと近寄ると頬に熱を落とし、
「さ、そろそろ出ようか。のぼせてしまう」
「う、うん…?」
首を傾げ、手を引かれるまま素直に付いていくが、しばらくしてされた行動を思い出すと、ぼんっと沸騰する様に顔を赤くし「す、スガタ…!」叫ぶ

「ん、何?…足りなかった?」
しれっと言い放つと「ばッ、ばか…ッ 先行く…!」ばしっと背中を叩き、慌てて脱衣所に向かう姿にくすくすと楽しそうに笑む


───さて、維持を打破、といくか。押せ押せ、意識させることから、な
(逃がさないよ、タクト)







風呂場から出たところ、呆れたような顔でワコが近寄ってきて、
「さっき、タクト君が勢いよく走っていったけど…」
何かしたでしょ、と確信めいた目で見つめてきた

「…少し、抑え、きかなかったかな。殴られてしまったよ」
猫パンチ、と面白そうに、愛おしそうに目を細めながらその時を思い出し微笑する


「少し…?それで抑えていたつもりなの、スガタ君?」呆れた表情のワコ
「…バレバレだった?」「うん」
はっきりきっぱり言う姿に思わず苦笑し、こほんと咳払いをすると、
「さ、タクトがお腹を空かせて待っているだろうし、早く行こうか」
「あ、誤魔化したー」
と、足早に二人で向かう



──結局はタクト君が好きなのね、み・ん・な
にこーっと楽しそうに笑むワコに人気振りを改めて思い知り、苦い顔をするスガタであった
(視線の先は楽しそうに談笑するタクトたちの姿)

(これはもっと思い知らせないといけない、な…)
(うえッ…また!?…いやーな予感…)

作品名:鮮やかな想い 作家名:夜。