再会の詩
この世から遠く 鬼国と云われた国《土佐》
海に囲まれた其の地で二人は穏やかな日々を共に過ごし 惹かれあう
見詰め合う幼き眼は まるで乱世であるのが嘘のように思えるほど
優しく 幸せに満ちていた――
あれから数年
あいつは覚えているだろうか? 姫若子と呼ばれていた俺を
そして知っているのだろうか? その姫が 土佐一国人であり
土佐の出来人と呼ばれていることを――
喜びと不安を胸に秘め 俺は今 愛する人に再び出会う
「よう!松寿丸。久しぶりだな」
あいつが愛した この美しい島で――
=====================================
今でも我の胸を焦がし 熱くする
瀬戸内の海を光で照らし 守護してきた島《厳島》
神が住みし此の地で 我らは緩やかな日々を共に過ごし 愛し合う
あやつは覚えておるだろうか? 欲しいと願った我の想いを
そして 知っておるのだろうか? その想いが 我にとって
唯一確かなものであることを――
不安と恋慕を胸に秘め 我は今 愛しき人と再び出会う
「よく来た・・・弥三郎」
我が愛した 美しい姫よ
―――
――――
―――――
――――――
―――――――ザザーン・・・
小波の音と潮の香りで 秘めた想いが溢れだす
お互いに見詰め合い 二人の距離が縮まり そして――
「「会いたかった」」
瀬戸内の地に再び穏やかな時が流れた――
作品名:再会の詩 作家名:oh!chiyoko