お団子
理由は、家の主である紫が妖気と殺気をだだ漏れにしていたからである。
紫の式である藍でさえ冷や汗がとまらない。
そして、その藍の式である橙はというと、もう見るも哀れな姿だった。
冷や汗はもちろん、その妖気に圧倒されて涙が止めどなく頬をつたい、
息も絶え絶え、顔面蒼白。
藍が気遣って別の場所に移るよう指示するが、橙は首を横に振って頑なにそれを拒否する。
目をそらしてはいけないと思ったから。
しっかりと見ていなければいけないと思ったから。
自分の主人の主人が、戦う様を。
「……なんでここに来たの?」
紫がにっこりと笑う。
その笑みは、怒りを押し殺した様な笑みだった。
「そんなの、決まってるじゃない」
対峙している相手、レミリアは殺気と怒気を押しとどめようともせず答える。
「お団子の仇、とらせてもらうわ。」
この際戦う理由が幼稚なのはどうでもいい。
重要なのは、紫が本気をだしていることだ。
「あら、そんなこと?」
紫が殺気と妖気を引っ込ませる。
「藍、お団子もってきなさい」
「……は、はい、紫様」
紫の命令で我に返った藍は、即座に動き、団子を一皿もって帰ってきた。
「ありがとう。ほら、レミリア。お望みのお団子よ」
「ふふ、話が早くて助かるわ」
そういうと満足そうにレミリアは帰って行った。
「……紫様!!そんなことでなんであんな妖気と殺気出したんですか!!橙が気の毒じゃないですか!!」
その日紫はみっちり藍にお説教された。
ちなみに橙は藍の手によって手厚く看病され、次の日には遊べるまで回復した。