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小さき気配

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 イギリスの反応に、日本が小皿を置いた場所を振り返る。無くなっている大福に気づき、日本は少しだけ驚いたように目を見張り、それから、嬉しそうに優しく目を細めた。
「…ちょ、日本! あれ! あいつ、大福持って…!」
 日本の行動も座敷童子の行動も理解出来なかったイギリスは、つい取り乱したように声を上げてしまう。
 しかし、日本はゆったりと笑い、「こういうやりとりは、本当にいつ以来ですかね。また出来るとは思ってもみませんでした」と小さく呟いた。
 その呟きに、直接渡すことはせず、間接的に渡すのが日本のやり方らしいと気付いたイギリスは、軽く咳払いをして気持ちを落ち着かせる。
 それから、縁側に置かれた空になった小皿から目を離さない日本に向かって言ってやった。
「…あのガキ、すっげぇ嬉しそうにお前を見て笑ってたぜ」
 見ることが叶わないことがもどかしいのだろうか、やはり。
「そう…ですか」
 今度こそ泣くのではないかと思うほどに、日本は嬉しそうに切なそうに微笑んでいた。
 本当に、もう二度と、日本があの存在に触れることは出来ないのだろうかと、イギリスは考えずにはいられなかった。
作品名:小さき気配 作家名:氷崎冬花