Monologue-CASE S-
暴力が嫌いだって割に、臨也にだけは先制攻撃してるじゃないかって?
そりゃ俺は基本的にやられたらやり返すが、やってこねえ奴には何もしねえよ。
けどよ、俺のことさんざん嵌めようとしやがったり、ろくでもねえことばっかり仕掛けてくる奴がいたら、とりあえずそいつのことだけは面合わせた瞬間にぶっ殺したくなるのは当たり前だろ。
あ? 最初からそうだった?
そうだったか? さあ……覚えてねえな。まあ、そういや確かに、面見るたびにムカつく、殺す、ぶん殴る、って思った覚えしかねえかもな。
ああ、あるんだろうよ、そういうのは。お互いに一目見ただけでムカつく相手、ってのはよ。
──え? 互いじゃないかも知れない?
何云ってんだ。
ガキが好きな相手をいじめる、っておい、そんな可愛いもんじゃねえだろうよ。
そりゃまあ、人間全部好きとかぬかしながら、そっちにもろくでもないことしかしねえがよ……それも好きの表現のひとつだ? ふざけんな。
だいたい、俺だけはその人間全部に入ってねえらしいじゃねえか。化けもんなんだろう? 対象外だ、対象外。
違う意味で別枠? 俺だけある意味特別……って、おい。妙なこといいやがるな……
だとしたらって──ちょっと待て。
考えろって……おい。
……
……──
……あのよ。
俺は向かってくるもんを返り討ちにすることしか出来ねえんだよ。
ひん曲がったナイフが飛んできたら、はたき落とすか投げ返すか、ひっつかまえて捻り潰すかのどれかだ。
俺にはそういう風にしか出来ねえ。
目の前にあるものにぐだぐだ理屈つけたり裏を勘ぐったり、そういうのは出来ねえんだ。
そんなことは分かってるはずだ。分かっててやっぱり飛んでくるのが、くそうざったい刃物なんだとしたらよ──ややっこしくてどうにもならねえよなあ。
それらしいまともなもんが飛んできたら? まともなもんってどんなだ。
あのなあ。
だから俺は、もしもとか例えばとか、そういうのは苦手なんだよ。
そうなってみないと分からねえ。
こうなるんじゃないかって思ってて、実際そうならなかったら、自分のことだけになんかイラっとするだろうが。
好きだろうが嫌いだろうが、殺したいだろうが殺されたいだろうが──はっきりそうと分かるまでは、俺がそれについてどう思うかなんて、答えなんかどこにもねえんだよ。
そうなってみないと分からねえ。
それでもやっぱりムカついてぶっ殺してやりてえのか。
なんか別の──それらしいまともな何かってのが出てくるのかはよ。
だからもしも、ほんとにそういうことだったら、とっととそう言えって言ってやりてえだけだな。
俺がてめえのこと、ほんとにひねり潰してしまう前に、ってな。
作品名:Monologue-CASE S- 作家名:ヒロセ