一理ある。
「あ、俺明日からなんだよ、入試」
久々知のその一言で、西日の差し込む教室に集まっていた友人たちが一斉にこちらを振り向いた。
「おまっ・・・兵助ぇ! それを早く言えよ!!」
「っていうかこんなことしてる場合じゃなくない? ほら、帰って明日の用意とか・・・」
「まぁ確かに、私たち持ち上がり進学確定組と一緒になって・・・麻雀ごっこなどしてる場合ではないな」
竹谷と不破に続いて鉢屋がそう言ってから、和了、と小さく付け足した。
彼らは中高大とエスカレーター式になっているこの学園の標準クラスに在籍しており、要するにある程度の成績さえキープしていれば自動的に進学できるのだが、特進クラスの生徒である久々知やその彼女の尾浜などは、学園側の方針により半強制的に某難関私立大を目指させられていた。
もっとも、尾浜は2、3ヶ月ほど前、すでに推薦でそれなりの大学に進学を決めてしまっていたが。
久々知はふと息を吐いて、
「別にいいんだよ、今更勉強しても大して変わらないだろうし。明日の持ち物はもう用意したし」
「何だよ兵助、余裕じゃねーか。心配する必要なかったな」
そう言って笑った竹谷はしかし、机上の戦況を見るなり青ざめた。
「・・・あーもうこんなのやめだぁぁ!」
「えー僕勝てそうだったのに」
せっせと机上を片付けだす竹谷を、不破が至極残念そうに見やる。
「いーや、そもそも健全な高校生男子が麻雀ごっこなんてやるべきじゃなかったんだって!」
「まぁ、一理ある」
「だろ! やっぱ兵助は分かってんな!」
竹谷がぱっと顔を上げると、久々知は真顔でひたすらカタカタとメールを打っていた。
「・・・何一人で盛り上がってるんだ、ハチ」
「う、うるせーよ三郎!」
ぎゃあぎゃあ言い合う級友を他所に、不破は久々知のペンケースの中を指差した。
「兵助、あの金色のは何?」
「ああ、昨日塾の先生から貰った鉛筆。『合格祈願』って書いてあるのだ」
久々知が削ったばかりの長い鉛筆を取り出して、ほら、と不破たちに見せる。
「鉛筆?! すごい・・・あ、でもそれ、試験会場で使えないよね。派手すぎて」
不破が言うと、久々知は妙に真面目くさった顔になった。
「確かに・・・・・・」
「い、意味ね―――!!」
牌をすべて仕舞い終えた竹谷が横から口を挟む。
久々知のその一言で、西日の差し込む教室に集まっていた友人たちが一斉にこちらを振り向いた。
「おまっ・・・兵助ぇ! それを早く言えよ!!」
「っていうかこんなことしてる場合じゃなくない? ほら、帰って明日の用意とか・・・」
「まぁ確かに、私たち持ち上がり進学確定組と一緒になって・・・麻雀ごっこなどしてる場合ではないな」
竹谷と不破に続いて鉢屋がそう言ってから、和了、と小さく付け足した。
彼らは中高大とエスカレーター式になっているこの学園の標準クラスに在籍しており、要するにある程度の成績さえキープしていれば自動的に進学できるのだが、特進クラスの生徒である久々知やその彼女の尾浜などは、学園側の方針により半強制的に某難関私立大を目指させられていた。
もっとも、尾浜は2、3ヶ月ほど前、すでに推薦でそれなりの大学に進学を決めてしまっていたが。
久々知はふと息を吐いて、
「別にいいんだよ、今更勉強しても大して変わらないだろうし。明日の持ち物はもう用意したし」
「何だよ兵助、余裕じゃねーか。心配する必要なかったな」
そう言って笑った竹谷はしかし、机上の戦況を見るなり青ざめた。
「・・・あーもうこんなのやめだぁぁ!」
「えー僕勝てそうだったのに」
せっせと机上を片付けだす竹谷を、不破が至極残念そうに見やる。
「いーや、そもそも健全な高校生男子が麻雀ごっこなんてやるべきじゃなかったんだって!」
「まぁ、一理ある」
「だろ! やっぱ兵助は分かってんな!」
竹谷がぱっと顔を上げると、久々知は真顔でひたすらカタカタとメールを打っていた。
「・・・何一人で盛り上がってるんだ、ハチ」
「う、うるせーよ三郎!」
ぎゃあぎゃあ言い合う級友を他所に、不破は久々知のペンケースの中を指差した。
「兵助、あの金色のは何?」
「ああ、昨日塾の先生から貰った鉛筆。『合格祈願』って書いてあるのだ」
久々知が削ったばかりの長い鉛筆を取り出して、ほら、と不破たちに見せる。
「鉛筆?! すごい・・・あ、でもそれ、試験会場で使えないよね。派手すぎて」
不破が言うと、久々知は妙に真面目くさった顔になった。
「確かに・・・・・・」
「い、意味ね―――!!」
牌をすべて仕舞い終えた竹谷が横から口を挟む。