He need Sweet.
- He need Sweet. -
皿の上のアヤシイ物体…既に原型を留めていない気がするが、元はパンケーキだったはずのものに、一之瀬は景気よくチョコレートソースをかけた。
バターにメイプルシロップ、ジャム、生クリーム…カラフルを通り越してカオスな色彩になっているソレを見て隣に座っていた土門の顔は引き攣ったが、当の一之瀬はご機嫌だった。
ようやく満足したのか適当な大きさに切り分けたソレを口に運ぶのを、土門は手を止めて凝視してしまう。
「――ん?」
視線に気付いた一之瀬がもぐもぐと口を動かしながらこちらを見る。
「……うまいのか?」
思わず聞いてしまったことを、土門はすぐに後悔した。
「おいしいよ。食べる?」
「いや、いい…」
フォークにささったソレを向けられると僅かに身を引き、首を振って自分の皿に向き直る。
「遠慮しなくていいのに」
「してねぇから…」
仕方なく差し出したソレを自分の口の中に放り込んで一之瀬が笑うので、土門もつられて苦笑混じりの呟きで答えた。まだ一之瀬の視線を感じるが、敢えてそれには気付かないふりをして食事を続ける。
「…どもん、土門。なぁ、これうまいよ?食べてみ…」
「いらない」
つんと肘で突かれ、再びそう言ってきた一之瀬を、今度は見もしないできっぱりとお断りする。
―――と。なぜか目の前に腕が伸びてきたと思った瞬間、ガシッと頭を掴まれていた。
何が起こったのか把握する間もなく、グキッと音がするかと思うほどに無理矢理首を捻られる。
「い゛っ……!?」
痛みに呻き抗議の声を上げようとした土門の視界を近付いてくる一之瀬のアップが遮る。
いつの間にかその場に立ち上がった一之瀬に両手で頬をがっちり固定されたまま、ぶつかるような勢いで…口付けられていた。
「……ン、ー……ッ!!」
薄く開いた唇から、差し込まれる舌…と、ナニカ。
先程のソレ、を口移しで押し込んできたらしい一之瀬のあまりに唐突な行動に、大して抵抗も出来ないまま土門は諦めて口の中のソレ、を唾液と一緒に飲み込んだ。
「うまいだろ?」
唇を離すと満足とばかりにニコニコしながら一之瀬が聞いてくる。
うまいわけねーだろ!…と、言ってやりたいところだが、どう見てもカオスなその物体が美味かったのか不味かったのか、正直どんな味だったのかさっぱりわからなかった。
結局、目を丸くして口元を押さえた土門は「あぁ」とも「うん」ともつかない言葉を漏らすしかなくて。
味なんてわからなかったけれど。
パンケーキと一緒に味わわされた一之瀬の舌はものすごぉーく甘かった。
…っていうのをみんなのいる前でやって雷門メンバーを凍り付かせたらいいと思う。
([∂]ω[∂])<It is Okey!! I am American!!
作品名:He need Sweet. 作家名:あそう