手をつないで
「どうして笑ってるんだ?」
知らぬうちに緩んでしまう口元に、彼の傷だらけの指がそっと触れました。
その優しい温もりにますます緩んでしまってどうしましょう!
「おい、なんなんだ?」
一人笑っている私を不思議そうに見つめる彼がとても愛おしい。
「なんでもありませんよ」
そう言って微笑めば、彼の眉間に微かな皺がよりました。
ご機嫌を損ねてしまったかしら、いいえちがいます。
だって、真っ直ぐに私を見る瞳はゆらゆらと揺れているんですもの。
「・・・ほんとうか?」
ああ、貴方は時々子供のように欲しがりますよね。
私の言葉を。
「ほんとうになんでもないのか?」
ぎゅっと、私の手を握る力が強くなる。
立ち止まり、蒼い蒼い瞳で覗き込んでくる。
「教えてくれ」
貴方の手は、とてもとても暖かい。
大きくて厚みのある手は力強くてでも優しくて。
私は貴方の手がとても好きです。
貴方の手に包まれる私の手も好きです。
手のひらを通して伝わる貴方の熱が、とても好きなのです。
「・・・幸せだなって」
お互いの熱を共有できるなんて、とても素晴らしいことだと思うのです。
貴方もそう思ってくださるでしょうか?
「そうか。それなら、よかった」
彼は照れくさそうに頷くと、繋いだ手を大きく振って歩き出しました。
ほんと、子供みたい。
指を絡めて繋ぎなおした手は火傷しそうなくらい熱くて。
振られるにまかせて、私も彼のすぐ隣にならびました。
ああ、幸せです。