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補色にして同色の我ら

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自分の似姿を人は求めるのか。

近ければ嫌悪し、愛惜する。
遠ければ憧憬し、厭悪する。

愛憎半ばするこの想いは。


「スガタ…?」


見開かれた瞳に、自分の顔が映っていた。
紅い色。
自分には持ち得ない華だ、とスガタは思った。


「タクト…」


見下ろす冴えた眼に、自分はどう映っているのか。
金と蒼。
冷然たる王者の色は孤高にして絶対だ、とタクトは思った。


一つ距離を縮めれば、今までの関係は壊れてしまうのだろう。
友人、という距離感は酷く曖昧だ。
そもそもが最も近しく、果てしなく対極の存在なのだから。

ゆえに求めてはいけない。
歪んだ合わせ鏡のように、伸ばす指先は交わることなく終わればいい。
だから触れたい。触れてはいけない。

ゆえに止められない。
合わせた額から、新たな熱が生まれた。
補色にして同色の紅と蒼が絡まる。

名は、紡げなかった。
重ねた吐息に心の臓が大きく脈打つ。
寄せた唇は何を齎すのか。

もう、互いの瞳に映るものを確かめる術はなかった。
作品名:補色にして同色の我ら 作家名:雨城 透