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小さな青い鳥(まるで君のような)

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タツマは大木の枝に座り、幹にもたれた。ひとりで旅をするのに火を起こす用意が面倒で、ただ寝るだけで食事をする必要がないなら、こうして木の上にいる方が楽だった。

 デュナンの統一戦争も終わり、かつての仲間も含めてみなそれぞれ旅立った。タツマも戦後、再び誰にも言うこともなく旅を再開させた。

 暖かな木漏れ日が木々の間からさす。日の高さからおそろく昼過ぎなのだが、街から離れるために夜通し歩いていたので体はひどく疲れていた。タツマは瞳を閉じて頭を背後の幹に預ける。

 改めてひとりになり、108星ではなかったとはいえ、人と触れ合い共に戦うことがあんなにも暖かいことだったんだ、と身に染みた。思わず自身を抱きしめるように小さく身を縮める。見知った人たちの笑顔・街のざわめき・美しく生まれ変わったグレッグミンスター・賑やかなノースウィンド。次々と光景が思い出されて、思わず頬を緩ませる。すると、ずきり、と右手が痛みだした。タツマは顔を歪め、身を抱える腕の力をより一層強める。
「思い出してただけだ……お前にはやらないよ」
 ぽつり、とまるで話しかけるように呟く。憂鬱な気分が高まって寝れそうにもなく見じろいで座り直すと、がさがさっと葉が揺れ可憐な鳴き声と共に一羽の小さな青い鳥が現れた。珍しさに右手を伸ばしてみれば、鳥は首を傾げた後、小さく飛んで手のひらに乗る。その可愛らしい頭を反対の手で撫でてやれば、つぶらな瞳を閉じた。思わず顔を綻ばすと、鳥はタツマの肩にとまり羽を休めた。
「お前、ひとなつっこいね」
 タツマは独りごちながら、ふと、人はおろか生き物に触れること自体久しぶりだったことに気がつく。食事のために狩りをすることもあるが、それ以外、例えばこうやって愛でようとすると逃げられてばっかりだった。
「なんでだろう……」
 そう呟くと、右手がずきっと痛む。驚き、まさか、と震えながら、右手にそっと触れる。まさかソウルイーターのせいなのか、でも。それが正解のように感じた。命を喰う紋章を身に宿して、人より感覚が鋭い動物たちが近づく訳もない。

 タツマは改めて肩の青い鳥に手を伸ばす。鳥は躊躇う風もなく、その手に飛び乗り、跳ねるように歩く。
「……ほんと、ひとなつっこすぎる」
 思わずこぼれそうになる涙を必死で堪えて、タツマは青い鳥を抱きしめる。鳥は驚いて飛び立つ。
「まって!お願い!もう少しだけ……っ」」
 身を乗り出し両手を伸ばすと、声が届いたのか、鳥は一つ上の枝にとまって羽の手入れを始めた。タツマは安堵し、驚かさないようにゆっくり体を幹に預ける。
「青色……綺麗な羽だね」
 タツマの言葉に返すように、鳥は小さくちゅん、と鳴く。
「まるでテッドみたい」
 そう言ってタツマは優しく笑い、瞳を閉じた。




(まるで君のような)