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つきあかり。

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つきあかり。





無数の屍が地を覆い尽くしている。

咽返る鉄の・・・血の香りが辺りに漂わせている。

地は、赤黒く染まっている。



ただ一人、つきを見上げている者がいた。
顔と両腕は赤い液体が雫をしたらせ地を濡らす。
その者の身体には、どこも大きな傷はなくあるのはかすり傷しかない。
赤い液体は・・・血は全て地に覆い尽くしている屍の返り血のようだ。
風が、独り月を見上げている者の闇に溶け込んだ髪を静かにかきあげた。
月明かりから見えた表情は、この場に相応しくない微笑をしている。
ゆっくりと一言呟いた。
「サスケ」





(任務は終わった。フフフ・・・)
目に浮ぶのはサスケの顔。
(もうすぐ里に着く。だがその前にこの返り血を清めて帰らないと・・・)
足取りは軽く、まさに風を切るかのように速かった。
先刻まで、任務のため戦闘をしていたかと思えないほどであった。
名はうちはイタチ。
木の葉の里でも優秀な上忍であり、名家であるうちは家の長男である。
そして、弟命・・・基、兄バカの道を驀進しているその人であった。
(さすがに、血だらけで帰ったらサスケに嫌われるな・・・いや、泣くだろう)
フッと足を止め、イタチは少し耳を澄ました。水の音がする方向に足を向け、また走りだした。

(泣き顔は嫌だーー)

着いた先には川があり、近くで枯れ木を集めて火を起こし、血だらけになった服を洗い火の傍に置くと、自分の身を清めた。
先の戦闘のせいか、己の中の血が未だ興奮状態だったので、冷たい川の水は心地よかった。


(サスケ。今ごろちゃんと眠っているかな・・・)
(はっ、あの父上・・・まさか一緒に寝てないだろうな・・・)
(くそ、こういう任務が一番嫌になっていく・・・)
(サスケの傍にいたい・・・・・)
ぱちぱちと枯れ木が炎に巻かれ音をだす。
「・・・はあ・・・」
イタチは深々と溜息を吐いた。
その姿は、写真に収めた者がいたのなら、さぞかし高値で売れただろうと思うほど一つの絵になっていた。
(くそっ、早くサスケの笑顔が見たい・・・)
「サスケ・・・」
じっと焚き火を見ていたが、月を見上げてサスケの顔をダブらせた。
「よし。粗方服は乾いたな・・・早く・・・」
慌てたように服を着て、焚き火を消し里に向かって走り出した。
(愛しいサスケーー、待っていてくれーーぇ)





「サスケ、いつまでそうしているの? もう寝なさい」
玄関の外に、しゃがみこんでいるサスケに母親は困った顔で言う。
それに対し、サスケは左右に首を振り、イヤイヤをする。
「困ったわねぇ」
母親の声にサスケは更に顔を曇らせたが、動こうとはしなかった。苦笑をした母親は、自分の手に持っていた羽織をサスケに羽織らせた。
「じゃあ、月が真上に昇ったら寝るのよ?」
「うん。ははさまありがとう」
サスケは曇らせた顔を綻ばせ笑顔で礼を言った。
母親はサスケの笑顔を見て、にっこり微笑み家の中に入っていった。


「まだ・・・かえってこない・・」
闇に浮んでいる月を見上げた。
(もうすぐ、おつきさまが、まうえにきちゃうよ・・・)
「・・・クスン・・・」
帰ってこない、心寂しさからサスケは目尻に涙を溜めだした。


カタン。
門の音が微かに響き、サスケは反射的に体を震わせ顔を上げた。
「サスケ・・・」
忍び装束に身を包んだイタチが目を丸めて立っていた。
「にいさま!」
驚きを隠せないイタチに対し、笑顔でサスケは走って行き抱きついた。
「ぼくね、にいさまをまってたの。おかえりなさい」
(え? え? ・・・サスケーーぇ)
イタチはサスケを抱きかかえた。
「・・・でもこんな夜遅く・・・・寝てないとダメだろ?」
「ごめんなさい・・・でもね、ははさまがおつきさまが、まうえにくるまでならいいっていってくれたの」
しゅんとしたサスケの背中を撫でてやった。
(くう~~っ、可愛い、可愛すぎる)
「サスケ、ただいま。遅くなってごめんな」
「うん」
サスケの満面の笑顔を見せられて、イタチは天にでも昇るかのように幸せだったとか・・・
「じゃあ、もう寝ような。サスケ」
「にいさまといっしょがいい・・・だめ?」
潤んだような瞳で、上目づかいでイタチを見上げる。
(サスケ・・・・それは卑怯だ・・・・そんな顔をされたら・・基、元から断らないけど・・・・・)
「・・・・じゃあ、一緒に寝ようか。サスケ」
「わーい、にいさまダイスキーッ」
首筋をサスケにおもいっきり抱きつかれ、イタチは鼻血がでそうになったが、さすが優秀な上忍である、気力で押さえ込んだ。
そして、二人で仲良く蒲団の中で眠っていった。



「イタチーー、貴様はーーーぁ」
朝、父親の叫び声で起こされたのは言うまでもない。
母親は、笑っているが少し怒っていた。それはもう少し早く帰って来いという意味だった。




家族総出で、サスケには甘いのである。

作品名:つきあかり。 作家名:雨水旭