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ずるい大人の優しい束縛

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(唐突な呼び出しをくらって、指定された物を買ってきてみたら何なんだ!?)





急いで走って、息を切らして玄関のチャイムを押したが返答は無く、
仕方が無いと思い、合鍵で入ったら当の本人はソファーの上で眠っていた。



(電話の声が何となく弱々しく聞こえたから心配して来てみれば・・・この仕打ちはなんなんですか!)



そう大声で叫びそうな気持ちを押さえつけて、とりあえず近くに寄ってみる。
いつも楽しげに言葉を紡ぐ口は閉じられているし、
こちらを見透かす様な瞳は男にしては長い睫に覆われている。
眠っている姿はいつもよりあどけなく、そうしていつもの数倍は顔立ちの良さが際立っていた。


(そう言えばこの人、顔は良いんだよな・・・顔は)



あの理解が追いつかない行動ばかり仕出かすその性格さえ目を瞑れば、折原臨也と言う男は格好良い部類に入るのだ。
あそこまで流暢にロシア語を話せる所を見ると、頭も良い筈だ。
声だって、帝人からしてみれば結構な美声だと思える。



(けれど、あの性格がその全部を台無しにしてるんだろうな・・・)



何だか考えれば考える程、帝人は同情に似た苦い気持ちを覚えた。
そんな複雑な心境のまま、改めて臨也の顔を見つめる。
眠っている姿なんてごくたまにしか見れない物だしもう少し見ていたい気もするが、
いつまでもそうしている訳には居られない。
一度起こしてみようと思い、名前を呼んでみる。



「・・・臨也さん」



起きて下さい、と言いながらゆさゆさと体を揺さぶってみる。
しかし、その呼びかけに臨也は少し顔を顰めて、また眠ってしまった。
それに負けじともう一度起こしてみるが、効果はない。
諦めた帝人は眠る臨也の隣に座ってみた。
ふと、窓の外を見ると来た頃にはまだ夕焼けに染まっていた空が、もう暗くなっていた。




「臨也さんは起きてくれないし・・・つまらないなあ・・・」




臨也へのあてつけの様にそう呟いても、もちろん返答は無い。
気持ち良さそうに眠る臨也をちょっと睨んで、眠っている臨也を起こさない様に肩に
寄りかかる。
(折角来たのに待たされているんだからちょっと位の仕返しならきっと許される筈だ)



(・・・あったかいな)



次第に帝人自身にも睡魔が襲ってくる。
最初は瞼を開いて抵抗しようしたが、その努力も空しく睡魔に負けてしまう。
(僕が今此処で寝てしまって・・・彼を困らせても今回は罰は当たらない筈だ・・・)




(ああ、でも・・・困っている臨也さんの顔はちょっと見たかったかもしれない)


目を閉じて、意識が睡魔に落ちる前に帝人はそう思って少し笑った。






「・・・・帝人くん?」



帝人の意識が完全に無くなった後、臨也はそう呼びかけてみる。




「参ったな・・・」




そう言って苦笑しつつ、肩に寄りかかって眠る帝人を見つめる。




「・・・・本当は最初から起きてた、とか言ったら帝人くん怒るかな?」




そう言って、臨也は柔らかい眼差しで帝人を見つめながら楽しそうに笑った。






ずるい大人の優しい束縛


(小さな我侭や悪戯を繰り返して)
(君を優しく束縛しようとする俺は、)


(どうしようも無く浅ましく、ずるい大人なんだろうね!)