二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

say,hello goodbye.

INDEX|1ページ/1ページ|

 
無音。無音。無音。
部屋は静寂に包まれている。それと同じく、一人このボロアパートの一室に寝転がる臨也の世界も静寂に包まれていた――いや、音どころか今の臨也には何も感じることもできなかった。
身体に異常はない。それでも臨也は何も感じない――感じていてもそのすべてを拒絶していた。
安っぽい天井をぼーっと眺める。別にみているわけではない。ただ眼を向けているだけで何も見ていない。
(何も、なにも、する気なんて起きない)
瞳を閉じて、静寂に身をゆだねる。あれほど輝いていた世界がすべて消えてしまったように感じた。いや、消えてしまったのだ、臨也の中で確かに。
閉じていた目を薄く開く。彼の声が聞こえた気がした。
力を入れるのも億劫なほど弱った肉体に指令を出し、右手を頭の上まで掲げた。
手のひらには薄い傷が見えるだけ。彼のつけた傷が、それだけが残っていた。
「っ、あ」
刹那、脇腹に引き裂かれるような痛みが広がった。
(傷が開いたのか)
他人事のように思った。自信の傷も、世界も、なにもかもどうでもいい。
臨也の頭に存在する唯一のもの、それが残っていればもうなにもいらなかった。
再び右手をかざし眺める。
この手の向こうに君がいればいいのに、なんてありえないことを馬鹿みたいに思う。
「君はもう死んだのにね、馬鹿みたいだ」
自分の言葉が乾いた空気に反響した。
(なんで、俺は生きているんだろう)
彼とともに死んでしまうはずだった、でも残ったのは遠い昔に彼がくれた右手の傷の跡と、最後に彼と交わした脇腹の傷、そして空っぽの体だけだった。
だから臨也は待っているのだ。
自分の体が朽ち果てるのを、いなくなった彼の部屋でひたすらに。
(俺に残っているのは君がくれたものばかりのはずなのに)
全てが消え去ったはずの感情。でも何故か、目元に熱い衝動がこみ上げてくる気がした。

「なんでかな。どうしても君の笑顔が思い出せないよ」 

『  いざやさん  』

枯れ果てたはずの涙が、臨也の頬に流れていった。 


【say,hello goodbye.】 


とり残された俺は記憶の中に笑顔の君を探し続ける。

作品名:say,hello goodbye. 作家名:セイカ