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抗戦ならよそでやれ

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さてはて?僕はいったい何をしたのだろうか?核爆弾のスイッチを押した?原子炉を吹っ飛ばした?
ミサイルのコンセントを引っこ抜いた?それとも穏便に花火を爆発させた?言っておくがそんなこと、普通に生きていれば出来るはずがない。
僕は日常の中の非日常を愛しているのであり、非日常そのものを欲している訳ではない。
だから、目の前で繰り広げられているもはや日常からはかけ離れた非日常にため息しか漏れないのだ。

「なんて、センチメンタルすぎたかな?ね、青葉君」

「あの争いを見ていてにこにこしていられる先輩は充分非日常の世界の人間だと思いますけど」

「えー!酷いなぁ。僕は誰がどこをどう見ても日常に生きる人間だよ」

だって僕はビルから飛び降りて平気でいらないし、素手で標識引っこ抜いて振り回せないし、日本刀なんて降ることさえ難しいんだから。
あ、あんな風に喧嘩に強くもないしね。と付け加えて見せたが後輩の呆れた顔がなんだか釈然としない。

「言葉を換えます。あの非日常って言われる人たちに好かれている先輩は充分日常からかけ離れていますよ」

青葉君はそう言うと、携帯を取りだしどこかに電話をし始めた。十中八九彼の手下達だろうなぁ。

「青葉君もあれに参戦するの?やめておいたら?」

携帯をぱちりと閉じると、青葉君はそれはそれは胡散臭い綺麗な笑みを浮かべてくれた。
あは、吐き気がするなその笑顔。と心の中だけにとどめておく。何せ僕は青葉君でさえ負ける腕っ節の弱さなのだから。

「どうしてです?貴方を賭けた抗争なら僕が参戦しないはずがないでしょう?」

「なにそのへんな意識。過剰って言わない?」

「いいえ、貴方の従順な左腕が見事貴方を勝ち取って差し上げますよ」

そう言うと青葉君は現れたブルースクエアの奴らと一緒に抗争のど真ん中へと突っ込んでいった。
あーあ。絶対怪我して病院送りになるよ。嫌だなぁ、これもしかなくとも僕がお見舞いとか行かなきゃいけないのかな。面倒だなぁ。
あ~、正臣と園原さんの連携技すごいなぁ・・・。金属ってぶつかると花火出るって本当なんだね。
んー耳にいたい金属音だ。
はは、鉄柱ってあんなに簡単にひしゃげるんだね。もうアートって感じだ。
あ、今のブルースクエアの子、絶対足折れたよね臨也さん子供に対してさえようしゃないなー。

「これはこれは竜ヶ峰君じゃないですか。お久しぶりですね」

あぁ、またこれまた面倒な人が現れたよ、なんなんだろう今日は厄日かそうかそうか。

「こんにちは四木さん。お元気そうでなりよりです」

「ふふ、君の声だだ漏れですけど・・・。まぁ、そこは大目に見ましょう」

「ありがとうございます」

これだから読心術使える人は嫌いなんだ。まったくどっかの情報屋だけで十分だよ。

「それで、あの醜い争いは・・・あぁ、君を奪うための争いですか・・・」

「よく分かりましたね~」

「先ほどから聞こえてくる単語を聞けば、解りますよ」

「あはは、僕はあえて聞こえないことにしています」

「おや?そうなんですか?面白い単語が聞こえてきてますけど」

「情操教育上良くないと判断しておりますので」

「そうですか」

四木さんは何か考えるそぶりをしてから、僕に対し笑みを浮かべた。
おぉ、上っ面の笑みはやはりすごい。この僕でもときめいちゃった。

「では、私も行って来ましょうか」

「はい?」

「いえなに。君の貞操をいただけるのなら私たちも参戦しようと思いまして。
 そうだろう、赤、青」

四木さんの声が急に低くなったかと思ったら後ろから二人の男の人が現れ、
僕を見てにこっと笑った。・・・その笑みの何とも怖いこと。
いや、笑み自体は怖くない。寧ろ熟年の男性の色香を感じるのだが、目が笑っていない。

「四木さん・・・」

僕はおそるおそる彼を見上げると、ふふと笑われただけで四木さんは後ろから現れた人たちと行ってしまった。
その際、赤林さんたちが僕の頭をそれぞれ撫でて、その行為を見ていた四木さんに頭をぶん殴られていたのは僕の心の中にしまっておこう。

そうして、池袋戦争またの名を帝人強奪戦という何ともはた迷惑な抗戦は三日間続き、
セルティさんという強力助っ人のもと、この抗戦は幕を閉じることになる。
まったく・・・、僕は男になんて興味はありません!

「なら私はだめですか竜ヶ峰君」

「え!?そそそ園原さん!?」

「私、必ず竜ヶ峰君の貞操を守って見せます!」

「・・・・・なんだろうすっごく僕今涙が止まらない」

『ハンカチなら貸せてやるぞ』

「すみませんセルティさん・・・」
作品名:抗戦ならよそでやれ 作家名:霜月(しー)