相も変わらずの五味
「一つ、体育があるにも関わらず、くっきり跡付けるのやめてって確かに言ったよね。二つ、行きずりの他人をからかうのに集中して、約束に遅れることも今度したら余地ないよって忠告したのになー。三つ、僕に仏心はないから覚悟して」
制裁の宣告を受け、最近カラーギャングにばっかり構ってて淋しかったんだもんといった臨也によるぐうの音も、氷点下の睨みで中断させられる。静かに鬼へとなった友人の裁判結果では、余地とは弁解する機会もない次元らしい。
窮地の臨也を見れば流石にちょびっとは可哀相だが、自己管理能力が人並み以上に足りていないから仕方ないと思考を修正する。
そのあどけない見た目で、無自覚ながらもギャップの詐欺を軽々と行う友人は、普段は従っているルールだとか一線をまあまあ守るが、一度好奇心が理性を何処かに追い遣ってしまえば主体性を持って、立ち入り禁止区域へと転倒しそうな早足で進むので油断は大敵な本性である。
初見は生真面目そうな生徒が、何故異彩を放つ面々とつるむのだろうかと周りは疑問視していたようだが、今ではすっかり明らかになった中身に得心している。まさしく触らぬ神に祟りなし、と。
そんな裏表があるかのように見える構成内容なので扱いに苦心するも、いい加減終着点が遠いので間に入り仲裁する。
一割くらいは嫉妬を期待したんだろう、程々にしてやれ。そうとりなすと落ち着くも、逸らされた目に気付く。本当を自首させる。四割、との音量の抑えた返事に頬を軽くつねる。…臨也、頼むから羨ましそうな様子はやめてくれ。他意などないから。ドタチンお疲れ様ー、と新羅に労われた。
傍観の上手な友人と比べ、要領の悪い自分は近々胃を痛めるかもしれないと、深く溜めた息を吐いた。
戦争にまで発展はしないが、恋中のくせして冷戦は頻繁に勃発する。付き合うのも大変だろうなと思うも、友人二人は揃ってこう言う。くせになったら、中毒になったら仕方ないのだと。
成程変わらないものは、確かにあるらしい。
臨也は関係者なだけ分かるような掲示方法で、白か黒か、どちらともつかない犯行の痕跡を残していく。自分が引き金を引いて拡散させたことを、悪戯が成功したかのように褒めて褒めてという風に。そして必ずと表現してもいい。眺めて微笑ましそうに出来るのは、黒幕に徹している張本人と付き合っている帝人だけである。
どちらもどちらで、このお互いしか目に入っていないカップルに適うものは居ないといつもながらに感じるので。
自分と同じく呆れた顔した友人と、阿呆の付くカップルの片割れと戦争中のとばっちりをくった友人に、本日も内心で得る必要も変化もない、素朴な同意を求めた。