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いっそ映画でも作ろうか

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元気にしてるか? と聞かれて、そのまま普通に返事をするのが癪で、「そうでもない」と曖昧に返事すれば、今度は物凄い勢いで心配される。
 何に付けても過ぎるなあ、と思う。
  元気じゃないから? 通りでいつもより疲れた顔をしているから? その通りだったらだから何だと本当は言ってしまいたいが、実行に移せないのはそれ以上に目の 前の人物が単純だからだ。なんだって真に受ける。仮にも育ての親だというのに面倒なことこの上ない。昔、自分が知っていたあの頃は滅多なことでは泣かな かった(本当に泣かなかったのだろう)のに、今は年甲斐もなく言及してきたり 、自分が叱咤すれば泣きもする。なのに次に会うときはしつこく話題を振ってくる。ある意味じゃ粘着質な女みたいだと言ってやりたくなったが、あながち笑え ない。冗談なんだし、適度に笑えない冗談は冗談じゃないし、本気で的中させるために言うのでは決してないのに、今の彼じゃそれは当たってしまう。
 だから、何。
 心の中で悪態をついて、でも言わない。その繰り返しで、自分がどこまで伝えたらいいのかを見失いつつある。爆発はしないにしても、毒素のような悪い何かになって着実に体を蝕んでいる、ような気がする。
 不器用なのか器用なのか次第にわからなくなってくる。
 体と心は深く繋がっているから思い込みというのは実に便利で、そうだと暗示をかければ悪い方向へは行かないものだ。だから自分で自分を器用だと言い聞かせてみる。といっても効果は、まあ今更期待は出来なさそうなのだが。
 本当は何だって良い。いつだって自分は空腹で、興を満たせる何かなら何でも良いのだ。こういうところは、話に聞く彼の昔にそっくりだと、どうであれ彼を昔から知る(例えばフランシスとか)人は言う。そう言われて、嬉しいはずがないのに。

「君は馬鹿かい?」
「はあ? 何言ってんだ、俺は心配して・・・」
「僕は元気だよ。ヒーローが元気じゃなくなったらどうするんだい?そんなの」

 存在価値がなくなるも同然、不必要、無意味。もう、死ぬ以外何もないじゃないか。
 他に言いたいことがあった気がする、そう、例えばたまには育ての親孝行しようとか、本当は考えていた。本当だ。だけど目の前にすると、やっぱり壁を建ててしまいたくなるのは何故なんだろうか。
 苛々する。それは一体何に対してなのか。それがまるであまりにありふれた感情で、シナリオでもあるのかと錯覚する。あるとしたら誰のシナリオだろう。神様か。なら仕方ないと、言ってしまえたら本当はいいのだが、そうはいかないのだから仕方ない。
 怪訝そうに疑問符を浮かべる彼を背にその場を後にすると、自然とため息が出た。それが安心感なのか不満なのか、もう考えたくもなかった。
 今日は胃が重たい気がする。久々にキクに胃に優しい食事でも作ってもらいに行こうか。以前もらったカンポウヤクもついでに。よく効いたあれは、アーサーの料理と同じくらいに不味かったが。
作品名:いっそ映画でも作ろうか 作家名:若井