二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
ひろにか@二次小説寄り
ひろにか@二次小説寄り
novelistID. 19895
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

キミにお願い(Akiha side)

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「だから何故この偉大なボクが、そんなことをせねばならんのだ!」
「アンタのせいでしょ、レオパルド!」
「黙れ枯れ葉!」


 ここは、レオパルド・コロニー内のレオパルド・ルーム。
 アタシは、すっかり日常化したレオパルドとの口喧嘩の真っ最中だった。
 月での戦いの後、ほのかちゃんとこれからのことを話していたはずなのに、コイツってば話に割り込んできて・・・


 しゃべるのはあんまり好きじゃないみたいなほのかちゃんは、それで話を打ち切ることに決めたみたい。
 少し離れてアタシたちが話しているのを黙って見ている。レオパルドの横暴を止めてくれる気は無いっぽい。


 それにしても、ほんと、なんでこんなヤツと知り合っちゃったんだろう。
 大体、枯れ葉って何よ? アタシには、獅子堂秋葉っていう名前がちゃんと・・・


「あの、獅子堂さんの妹さん、ちょっといいでしょうか?」


 ――っと、いけない!


 聞こえてきた言葉に、アタシは考えていたこともレオパルドとのケンカも即中断。最優先で振り向いた。



キミにお願い(Akiha side)



 「はい!」と返事をしようとアタシは口を開く…ところまでは普段通りにできたんだけど、そこからはいつものようにはいかなかった。
 アタシの後方、声をかけてきた人がいるはずの場所には、誰もいない。


 さっき聞こえた声を頭の中で反芻してその主を特定し(返事を優先してたから、誰に呼ばれたかは考えてなかったんだもん)、その彼女の姿を見つけたけど・・・話かけている相手は・・・あれ? アタシじゃない?


 声の持ち主の彼女――いつきちゃんは、うちの妹の桜に何か聞いているようだった。
 わざわざ腰を屈めて目を合わせて話しているところはいかにも生真面目な彼女らしい。


 ・・・って、そうじゃないや。
 さっきのは確かにいつきちゃんの声だった、うん。
 じゃあ、あの『獅子堂さんの妹さん』っていうのは桜のことで。
 その中の『獅子堂さん』がアタシ・・・で、いいのよね?


 取り立てて難しいことはないはずなのに、理解するのにやけに時間がかかった気がする。
 だってアタシは、そんな風に呼ばれたことなんてほとんどない。
 むしろ『獅子堂さんの妹さん』という呼び方の方が馴染み深いくらいなんだもの。


 アタシは、お姉ちゃん達の知人から『獅子堂さんの妹さん』と呼ばれることがかなりある。
 アタシ自身の名前で呼ばれる数と同じくらい・・・ううん、もしかしたらそれよりも多いかも。
 他の何より返事を優先する習慣も、それで身についた。


 実は風音お姉ちゃんってば、けっこう怒りっぽい(これ、人によってはなかなか信じてくれないけど)。
 自分の知り合いに失礼な態度をとったとバレたりしたら、こっぴどく叱られてしまうのは絶対だ。


 風音お姉ちゃんがいきすぎた時に止めに入ってくれる高嶺お姉ちゃんも、武道をやっているせいか礼儀には厳しいからこういう時には庇ってもらえなくって。
 いつも気を付けていないといけないから、正直大変。


 声をかけてくる人は有名人のお姉ちゃん達を一方的に知ってるだけで、顔見知りじゃないことほとんどなんだけど、たまーに本物の知り合いがいたりするから無下にはできないし。


 しかも、お姉ちゃん達の知り合いだけじゃなくナミや桜のお世話になってる人にもきちんと挨拶しないとやっぱり怒られちゃうのよね。
 アタシはそういう人達の方からは『獅子堂さんのお姉さん』って呼ばれてる。


 どっちにしろアタシは『獅子堂さん』の姉妹、だった。
 でもいつきちゃんにとってはアタシが『獅子堂さん』なんだ。
 ・・・何だろ、変な感じ。・・・イヤとかじゃなくて、何だか心がむずむずするような・・・


「オイ枯れ葉、人の話はちゃんと聞け! 何を笑っているのだ!」


 ・・・レオパルド。ああそういえば、アタシこいつとケンカしてたんだっけ。
 まあいいやそんなこと。それよりアタシ、笑ってたんだ・・・。そっか。


「すみません、獅子堂さん。少しお願いしたいことが・・・」


 不意に近くから聞こえたいつきちゃんの声にアタシは我に返った。
 何ていうんだろうこの感覚・・・感慨? ともかくそんな気分に包まれていてぼーっとしていたみたい。


 困った顔の彼女の後ろには、独特の言語と身振りをめいっぱい発している桜の姿が。
 それは、普通の人には奇妙な歌と踊りにしか見えなくても無理はない。


「あー、わかった。ちょっと待ってねいつきちゃん。桜、最初から話してくれる?」
「ほいほーい♪」
「ありがとうございます」


 ほっとした様子のいつきちゃんに「いいよ、気にしないで」と返してアタシは一番下の妹に向き直った。


「待て枯れ葉! 何がいいものか! ボクの話はまだ終わっていないぞ!」


 わめくバカパルドは無視に決定。
 ちゃんと名前も呼んでくれないヤツと、アタシを他の家族より優先してくれる友達と。
 どっちが大事かなんて、考えるまでもないわよね。


 桜のこの話が終わったら、いつきちゃんにひとつお願いごとをしてみよう。
 きっと彼女はわけがわからず戸惑うだろうけど、アタシにとっては特別なこと。


 ――ねえ、ちょっとアタシのこと呼んでみて?