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【腐向けAPH】ドキュメント2【英米】

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 立ち上がって揚々と演説をする人を見る。糊でぺたり、貼り付けた顔で笑顔を浮かべているのを見ると苛苛とする。思わず噛んでしまった煙草のフィルター、そんなものに当たっても仕方が無いのに、アーサー・カークランドは相変わらず苛立っていた。お前の笑顔はそんなんじゃない、今日何度呟いただろうか。会議中、殆ど正面に座っているあいつはへらへらと笑いながらいつも通りなんてこと無いことを言っている。その発言の多くが酷くくだらない会議とは全く関係の無いことである。最も、彼に言わせればそれも関係があるらしいのだが、自己満足に過ぎないのではないかと思うことも多い。現在は禁煙が進んでいる会議であるが、本日はたまたま喫煙OKの会議場だったわけで、煙が黙々と空気清浄機に吸い込まれていっていた。
「…本数多いんじゃない?アート」
「煩せぇ、髭」
 小さな灰皿に捻じ込まれていく煙草を見て隣に座った腐れ縁が言うがそんなことなんて聞いちゃ居ない。視線は真っ直ぐ先に居るアルフレッドばかりを見つめている。その事実にはおそらく会議に参加している殆どのものが気が付いているだろう。それほどまでにあからさまにカークランドはアルフレッドのことを凝視しているのだ。そして、運悪いことにアルフレッドはその執着心にあふれた眼差しで見つめられていることには気が付いていない。全く、鈍感とは罪である。彼らを生ぬるく見守っているフランシスは思った。そろそろこいつも限界だろう。フランシスは思ったらしく、苛苛とマイナスの空気を発し続けるカークランドを見つめながら、切り出した。
「さて、そろそろお昼にしない?お兄さんお腹空いちゃった」
「…ああ、そうだな」
 がたん、主催国がそれに賛同する前にカークランドは椅子から立ち上がり、ひらりと手を振りながら会議場から出て行く。相当苛立っているらしい。そんなカークランドの態度で気が付いたのか、ご機嫌に会議を進めていたジョーンズががたん、椅子を鳴らしてショックを受けたように立ち尽くした。どうしてとでも言いたいような酷く情けない表情をしている。気分屋のカークランドの気持ちを同じく気分屋だが、ベクトルが同じ方向のジョーンズに理解できるはずは無かった。彼は椅子の背にかけてあったジャケットを肩にかけて焦ったようにカークランドが消えた方向へと走る。直ぐに追いつく、確りとブリティッシュモデルのオーダーメイドを着込んだカークランドは足音を響かせて廊下を歩いている。ジョーンズが呼び止めても彼は止まろうとはしなかった。
「…アーサー、」
「あ?」
「何でそんなに機嫌が悪いんだい?」
「普通だけど、」
「嘘だ。いつもなら俺と一緒に昼飯食べてくれるんだぞ!」
 彼を追いかけて小走りになりながら言うと、途端にカークランドの足が止まる。そして黙り込んで、少しだけ上にあるジョーンズの空色の瞳を見つめた。同じ金髪なのに透明度に違いがあって、同じ瞳なのにアルフレッドは空の色をしていて、カークランドはどこまでも深い緑色をしている。そんな些細な違いを見るたびにアルフレッドは実は落ち込む。カークランドは硝子のように綺麗で鋭利だ。ジョーンズにはその鋭利さは無い。煙草の臭いを放っていても、それが体温と溶け合ってジョーンズの鼻腔を擽るのだ。
(ほら、またその眼差し、俺が好きな、眼差し)
「じゃあ、いくか?」
 ぶっきらぼうにカークランドは言った。未だご機嫌斜めのようだ。何が彼の機嫌を損ねたかはジョーンズには分からない。けれども、彼の機嫌をを直す方法なら知っている。
「…誘って欲しかったんだぞ、俺は」
「いつも誘うと思うか、ばか」
 手を強引に取られる。彼は瞬時に壁に押し付けられて、カークランドは開襟シャツの襟元に顔を埋める。がぶり、効果音が聞こえそうなほどにまでアルフレッドの真っ白の肌を噛む。つ、彼と彼を引き結ぶ唾液を残し、己の唇を拭いてから、簡単に鬱血して歯型が付いた首筋を見てカークランドは酷く満足そうに笑った。
「お前が忘れてるみたいだから、苛苛してた」
「……何を」
 その答えは知っている。知っているからこそあえて聞くのは頭が悪いだろうか。ぐらりとカークランドのグリーンの瞳に光が灯る。常に狂気と正気の狭間を歩む彼の、狂気の部分が酷く好きだといったら、軽蔑されるだろうか。
 
「お前は、俺のだ」