嫉妬にはご注意を…
「…ふーん…青春の謳歌、ねえ」
「す、スガタさん…?か、顔が怖いです…ッ」
あと近い…!
迫り来るスガタの体を遠ざけようと精一杯押すが、逆に手を掴まれそれはそれは良い笑顔を浮かべ引き寄せられる
(い、いっつあ、ぴーんちッッ)
だらだらとタクトは冷や汗をかき、引き攣った笑みを向け、腰に当てられた腕を外そうと躍起
あまりにも近い顔に頬は赤く染まり、鼓動が煩い
「ねえ、タクト。……僕とも青春、謳歌しようか…?」
甘く囁かれ、吐息がかかる
スガタはいつの間にか掴んでいた腕を放し、するりと頬を撫でそのまま唇をなぞると笑みを深め、固まるタクトに目を細めた
「……ッ」
次第に言葉の意味を把握し、真っ白になっていた思考が戻り、口を何度も開け閉め
「け、けけけけ結構です…!」
熟れたトマトのように顔を真っ赤にしながらタクトは首をぶんぶんと振り、必死に否定
その行動に、むっとスガタは眉を寄せ、腰に当てた手に力を入れ、より引き寄せた
「わ…ッ」
「悪いけど、僕、否定はなしの人なんだ」
距離を詰めたスガタにタクトは驚きに目を見開き、そして…
──柔らかい熱が唇に触れる
強引なくせにそれは優しく、暖かい
自然と目を閉じ、タクトは受け入れる
何度も、何度も熱は落とされ、何も考えられない。いや……相手のことしか考えられない
甘美な……熱
しばらくするやっと放され、上がった息を整えようと深く深呼吸
「…ごめん、嫉妬した」
今だ息は荒く声を出すのが辛いが、これだけは否定したい
「……ばか」
「うん…」
「スガ、タのばーか…ッ 僕は、スガタしか…!」
いやだ、と音に出さず口だけで動かすと、強い力で抱きしめられる
そっと背中に腕を回し、「僕も…ごめん」と相手に擦り寄り、呟くと僅かに頷く気配
服をくいくいと引っ張り、どうしたと目を向ける彼に頬に顔を寄せ熱を落とす
何時もはしない行為にスガタは嬉しそうに目を和らげ、再び顔を近づける
(…どう機嫌を直してもらおうかな)
頭に、そうこっそり思い浮かべつつ、タクトは目を伏せるのであった
(さて、今日は泊まりにおいで。…というより来い)
(うえ…!す、スガタさん、まだ怒って…!?)
(当たり前だ。あれはあれ。これはこれだ。たっぷり可愛がってやるからな)
(ううう……お手柔らかに…)
後日、腰を擦るタクトにワコたちは輝いた目で見つめていたという
───嫉妬深い恋人にはご注意を…?