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師走の弟子は邪魔である。

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 12月の寒空の下、家を追い出された。
 なんてひどい仕打ちだろう。
 わたしはキッと空を睨み上げた。
 雪こそ降っていないけれど、そこには灰色の雲が重く立ち込めている。こんな天気の日に、「夕方まで帰って来るな」だなんて、師匠は人でなしだ。
 今日は、わが家では大掃除の日だった。
 わたしも張り切ってお手伝いをしていたのに、網戸に穴を開け、花瓶を二つ割り、師匠がピカピカに磨いた廊下にバケツの水をひっくり返したところで、外へ追い出されてしまった。
「わたしって役立たずだぁ……」
 大きなため息がこぼれた。ついでに涙もこぼれそう。そりゃあ、わたしが悪かったけど、決してわざとじゃなかったのに。
 すると、後ろから「マナ」と、呼び止められた。振り向くと、王子がいた。
「家にいないと思ったら、こんなところで、なにをしてるんだ?」
「王子こそ。まさか王子も追い出されたんですか?」
「オレは窓拭き用の洗剤がなくなったから買いに行くところだ」
 師匠が王子を買いものに行かせるなんて珍しい。いつもだったら、自分で行くか、わたしにおつかいさせるところだ。わたしのせいで、王子にまで面倒をかけてしまったみたい。もう、さいあく。
「そうか。マハードに追い出されたか」
 事情を聞いて、王子は苦笑した。全然笑い事じゃない。わたしはじろりと王子を横目で睨む。けれど、王子はそれをさらりとかわしてこう言った。
「マハードがオレに買い物を頼んだわけがわかった。行こうぜ、マナ」
 王子はわたしの手をひいて歩き出した。え? え?
「ちょ、ちょっと王子! どこに行くんですか!」
「ホームセンターだ。洗剤を買って、一緒に帰るぜ」
「でもわたし、夕方まで帰ってくるなって言われて」
「オレが一緒だから大丈夫だ。それに、実を言うと洗剤の売り場がわからないんだ。マナが教えてくれよ」
 王子は振り返って片目をつむった。
 王子の言わんとしていることがわかって、わたしはそれ以上、口を挟むのをやめた。ああ、どうしよう。反省してなきゃいけないのに、王子に手を引かれて、わたしはふわふわ宙に浮かんでしまいそうな気分だ。
「王子! わたし、もう花瓶を割ったりしません! バケツもひっくり返しません!」
「うん。マナならできるぜ」
 王子がそう言うから、わたしもきっとできる気がした。
作品名:師走の弟子は邪魔である。 作家名:p.