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GOOD Bye

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 朝は、目覚ましをかけなくとも起きれる。この時間に起きたいと思えばその時間ピッタリに目が覚めるのだ。変な話寝相も悪くない。眠りにつくのも悪くない、沈み込むようにスッと眠りに入れる。しかし眠っていても感覚はさえている。どこか己の眠りはただの仮眠でしかないように思える。研ぎ澄ましているのは常で少しの物音で起きてしまう。眠りは、どこまでいってもただの作業だった。
 朝起きてすることはまず窓を開けること。そして飼っているハットリが空へ飛び出し散歩に出かける。それを見送ってから簡素でものがない部屋を通りすぎシャワー室を開ける。服を全て脱ぎシャワーコックをひねるとお湯が流れ出す。髪と体を洗い簡単にひげを整えコックをひねり止めると、濡れた体を拭きこしにタオルを巻きつけて鏡を覗き込む。身支度を整えて髪を乾かし服を着ると散歩から帰ってきたハットリにえさをやり買っておいたパンを齧る。全て食べ終えてドアを開ける。
「いってきます」
 律儀にそう告げると階段を降りる。
 この水上都市は水の道がある。そこにはヤガラがいてそれに乗って移動するのが常だ。高台に住むルッチにとってそれは少々面倒だが、ヤガラがあれば大抵のところへいける。なにより高台からみるこの町は美しかった。水の音がする。主人を見つけたヤガラが嬉しそうに「ニー」と啼き頭を撫でてやる。
「今日も頼むぞ」
 話しかけると返事も勢いよくニーという。肩に乗ったハットリがクルッと啼いて同じように頭を撫でてやる。ヤガラに乗り込んで職場へと出かけた。
 このウォーターセブンは町の中心に巨大な噴水がある。どんな路地裏に入ってもその位置がわかるそれは街の象徴だ。あの巨大な噴水は朝昼夕この街を見守っているのだという。数年前この街にたどり着き船大工という仕事をしているルッチにとってこの街は過ごしやすい。なによりこの街の雰囲気と住んでいる人々がいいのだ。
 ヤガラは進んでいく。水路は家の横にも通っていてまるで迷路のように張り巡らされている。少々水がはねて服を濡らすがそれも厭わない。この街が気に入っている要素に、もう一つ加えよう。
「よおルッチー!」
 水路ではなく、陸路を歩いている男が手を振っている。
「おはよう、ハットリもおはよう」
「朝から元気だなお前は」
「なんだよおはようもいえないのかよ」
「…そういう訳じゃねぇ…おはよう」


「パウリー」





 水の音がする。
作品名:GOOD Bye 作家名:いつも