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GUNSLINGER BOYⅩ

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ああ、本当に滑稽だ。
冷たく接して、引き離して、触れたい気持ちも抑えて。
これまでのは一体なんのための我慢だったんだ。結局水の泡じゃないか。


「ほんと・・ふざけんなよ。なんなんだよもう」


華奢な身体をきつく抱き締めながら吐き出すように呟く。

俺は折原臨也なんだ。
人間全てを愛する代わり、特定の誰かにとらわれたりしない。特定の誰かを愛したりしない。
そうだ、俺は誰のものにもならない。
自分のせいで誰が破滅しようと死のうと知ったことじゃない。
自分の欲望のまま、気分のまま、やりたいように自由に。
そう、
そうだったはずなのに。

「ほんと最悪だよ・・・なんなの君。どうしてこの俺がこんなに必死にならなきゃいけないんだよ。ふりまわされなくちゃいけないんだよ」
「い・・いざやさ・・・・?」
「俺は人間が好きなんだよ。君なんて、君なんてただの実験対象のくせに、どうして・・・・っ」


どうしてこんなに愛しいんだろう。



「・・いざやさんは・・僕のこと、嫌いなんじゃ・・・だから僕の担当官、やめるって」
「そんなわけないだろ!!いちいち本気にすんなよ!!
ああ、そうだよね。君は『臨也さんがそう言うならそうなんでしょう』って、いつもそればっかりだ。
俺の気もしらないで・・・・っ!」

担当官の言葉には疑問を持たない。
それが義体の性質なのだと分かっている。しかし、だからこそ苛立たしい。この子が人間とは違うと、洗脳で操作されていると感じる瞬間が嫌いだ。
でもそんな人間じゃないこの子のことを、人間よりも愛している。その事実はどんなに否定しようと思っても変えられらない。
そして何度も打ちのめされるのだ。

「ああ・・もうやだ。散々だよ。こんな雨の中走らされて、心配させられて、疲れたし寒いしさ・・・あげくに静ちゃんなんかにはめられて、全部君のせいだ」
「僕の・・・」
「君なんかを好きになったせいだ」

帝人が息を飲むのが分かった。
抱き締めてここまで言って、やっと分かったらしい。

「君たち義体はどうせ、誰が担当官になっても同じように尽くすんだ。それが君の場合はたまたま俺だっただけで。
・・それなのに俺は本気で君のことが好きなんだよ。」
「っ・・・・・・」
「そんなの不公平だしくだらないから、ただの人形だって思いこもうとしてたのに・・・」

あんな顔であんなこと言われたら、もうこらえようがなかった。
気がついたら衝動的に抱き締めていた。
反則だ。
あんなのは反則だ。

「・・・他の担当官なんかにくれてやるわけないだろ・・バカじゃないの」

君は俺のだ。

帝人が他の担当官のものになる。強い薬を使われて寿命が縮み、感情が希薄になる。臨也のことを忘れる・・・
あの時帝人に放った暴言は臨也自身が想像するのすら嫌だと思うことばかりだった。
大体、帝人以外の義体など欲しいと思うわけがない。


「で・・・でも、僕、臨也さんのこと、殺そうとしたんです」

そんな僕があなたと一緒にいていいわけがないと、泣きそうな声で帝人が訴える。
それすら愛しくて仕方がない。

もういいよ。

あきらめればいいんだろ。
認めればいいんだろ。

タイムリミットがあまりに短い、この不毛とも思える恋を受け入れるしかないらしい。
本当に、結局全て無駄な抵抗だったわけかと心のうちでわずかに自嘲した。


「君にだったら、殺されてもいいよ」
「そんな・・・・っ」



「だから・・・そばにいてよ。帝人君」



答えを聞く前に小さな唇を同じもので塞いだ。
君に選択権なんてあるわけないだろ。
作品名:GUNSLINGER BOYⅩ 作家名:net