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アシンメトリア (新刊サンプル)

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バタンッ!

 自室のドアを乱暴に閉めてきっちり鍵をかける。壁に掛けてあったリュックサックをおろして、手当たり次第に荷物を詰め込み始めた俺の頭上から、おろおろとした声が聞こえる。
『十代くん、落ち着くニャ。こんなのってよくないと……』
「大徳寺先生こそ落ち着けって。俺は落ち着いてるし、どうせ最初から出ていく予定だったんだから問題ないだろ」
 先生の言葉をさえぎってまくし立てると、また胸がむかむかして気持ち悪くなってきた。
 これも全部全部ヨハンが悪い。ヨハンのせいだ!
「ヨハンが悪い! ぜーったい俺は謝らないからな!」
 怒りにまかせて服を丸めて放り込む。
『ぜんぜん落ち着いてないニャ……』
 大徳寺先生のあきれた声にぎっと頭上をにらみつけると『ヒィッ!』と悲鳴を上げて逃げられてしまった。……そんなに怖がることないじゃないか。
 ともかく、口に出すと腹が立ってくる。同居人への悪態が次から次へと、湯水のようにわきあがってくるのだからしかたがない。
 充電していたパソコンのコンセントを抜いてぐるぐる適当に巻き付ける。
『コードを結びつけるのはあんまりよくないんだぞ』
「うるさい!」
 脳内に聞こえてきたいつかのヨハンの声にまで罵声を浴びせた。コードは結んだままパソコンともどもリュックの中へと入れる。言うことなんか聞かないぞ。パンツもただ丸めてつっこんだ。靴下だけは一足ずつまとめる。これはヨハンに言われなくたって俺でもわかっている当たり前のことだ。片方だけの靴下なんてかっこわるいし、余るのはもったいない。
 だいたいの荷物を詰め終わり、自分の身支度を整える。寒いからと買ったコートは走るのには向いていないが、寒さの厳しいこの街では必需品だ。それからマフラーと手袋も。それらふたつも持とうとして、やはりやめた。……ヨハンからの借り物なんか持っていけるか!