土方十四郎の恋愛事情 1
さっきまで腑抜けた様子だった土方は、
低く澄んだ声音に慌てて立ち上がり
声の主を愛おしそうに見つめた。
「銀時・・・・・・」
「おいおい、どーした?可愛い顔して」
「なっ・・・!!!」
ニヤニヤとした表情で銀時が言うと
土方はいつもの仏頂面に戻った。
「なんで来たんだよ。他の奴は恒例行事の花見だ。そっちに・・・・・・」
「お前に会いたかったんだ」
不意に銀時が放った言葉は土方の心を苦しめた。
-------俺、銀時のこと好きにならないようにしてたのに
なんでそんな無神経なこと言うんだよ・・・?
「ずるいよな、銀時は」
「そりゃあねーよ。お前のために来たのに」
ぽすっと銀時は土方の頭を撫でた。
土方は、されるがままにじっとしている。
銀時の手は大きくて優しい。土方は、こうされるたびいつも思っていた。
今だけは、俺を見てくれている。この時間が終わらなければいいのに、と
そんな事を考えていた自分が恥ずかしかった。
銀時は躊躇ったように目を逸らし、呟いた。
「そんな顔してっと、キスすんぞ」
土方は一瞬、銀時にならキスされてもいいと思ったが
流石にいけない事だと分かっていた。
「銀時。お前も俺も男だ。女とは好きなだけやればいい。
だが俺たちは・・・」
「んな事ぁ分かってんだよ」
銀時は狂おしそうに土方を見つめ、頬に手をそえる。
「俺は、土方十四郎が好きなんだ」
土方に反論させる隙も与えず、銀時は土方に唇を重ねる。
土方は抵抗しようと銀時の胸を押すが、力が入らない。
自分の舌を弄ぶよう銀時は探ってくる。
「んっ・・・・・・」
土方は、自分の出した始めて聞くような甘い声に恥らった。
銀時はそれに気付き、口を離そうとする。
しかし土方は、銀時からなにか言われるのが嫌だったし、
このままずっといたいと素直に思い、銀時の肩に手をかけ
引き寄せた。・・・・・・
「ま~ったく近藤さんは土方の野郎に甘々ですぜぃ」
ブツブツと文句を言いながら沖田はポケットに手を突っ込んで
真撰組屯所に向かっていた。花見の最中に酔っ払った奴らを
止めるのに、近藤さんと酒の飲めない俺だけではカズが多すぎだ
ということで留守番をしている土方を呼びに行けと言われたのだ。
-------俺だけで十分なのにアイツにばかり頼って、
そんなに俺は頼りねーのかよ。
俺は土方と対等の存在になりたい。
部下や子供とかではなく、1人の人間として
見て欲しい。って、土方が好きだからなんだ
ろうけど。
「お?」
もの凄く見覚えのあるバイクを発見。
それは、屯所の門の前に止めてあった。
間違いない・・・銀時の物だ。
「アイツ・・・・・・っ」
沖田は、そう呟くと全速力で
土方の元へ向かった。
作品名:土方十四郎の恋愛事情 1 作家名:烏丸@ツイッターしてます