赤
ピーター神子には、赤い薔薇。
「だけど、どーして、赤い薔薇なんだ?」
と、天子男ジャックが、聞いた。
「どーしてって、そんなの決まってるじゃないか!え~と……あれ?」
横から口を出した、ヤマト王子も、言い淀む。
「でもでも、ピーター神子さんには、よく似合ってますのよ」
十字架天使が言うと、その場にいた全員が頷いた。
「確かにな……でもなあ」
それでも男ジャックは納得いかないらしい。難しい顔をしている。
「天子男ジャック、意見はもっとはっきり言ったらどうだ?」
「そうですよ、言えば、きっとすっきりしますよ!」
魯神フッドと照光子に促されて、男ジャックは、再び口を開いた。
「例えば……赤い薔薇は確かにきれいだけど、白い百合や、青いすみれだって、やっぱりきれい
だろ?どーして、赤い薔薇なのかなあ、と、思ってさ」
男ジャックが言わんとする意味を理解して、皆、『ああ』という顔になった。
「そういえば、そうだね。ボクは、ひまわりなんか好きだなあ~。見てると元気がでるよ!」
「でも、そりゃあんまりピーター神子のイメージじゃないな」
「菊も良いですよ。丹精込めて育てると見事な花を咲かせます」
「我が聖豊源では、時期になるとりんごの花が咲き乱れ、それはそれは美しい眺めだ」
「聖夢源は、桃だな!聖夢源全体が薄桃色に煙るんだぜ!」
「そんなこと言ったら、マメの花だって、じゅうぶんきれいだぜ」
「はいですの!ピンクのスイトピーなんか、とっても可愛らしいですのよ」
「ええ?スイトピーっつったら、赤でしょ、やっぱり」
「ラベンダーだな。夜明けの海の色だ」
「旅立ちはフリージア」
「一体何の話をしているんです?」
エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ……花の名前を言いあっていると、確かに、不思議に思
えてくる。
美しい花はこんなにいろいろあるのに、どうして、赤い薔薇なのか。
皆の話がピタリと止んで、ピーター神子に、視線が集中した。
ピーター神子は、にっこり、微笑んだ。
「赤い薔薇は、珍カーベルが、好きなんだ」