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マイ・サンタクロース(静帝)

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 大通りに溢れる、クリスマス特有の鮮やかなイルミネーションと幸せそうな頬笑みを浮かべる人々。
 そんな日常とは対照的に狭い路地裏に響き渡る、唸るような怒号と宙を舞い逃げ惑う人間。それを眺める少年の瞳には、この眼前に広がる光景全てが箱を開けたばかりのクリスマスプレゼントのように煌いて見えていた。




「怪我とか……取られたもんねぇか?」

 池袋最強の異名を持つ平和島静雄は一頻り暴れ終わると、足元に落ちていた薄っぺらな財布を拾い、傍に立っていた細見の少年に投げ渡した。その少年は受け取った財布の中身を確認すると「大丈夫です」と頷き、微笑む。その笑顔は今時の男子高校生にしては、幼く頼りないものに見えた。

「静雄さんこそ怪我はありませんか?」
「……大丈夫だ」

 静雄は、この少年の事を今でも不思議に思っている。
 片手で容易く標識を引き抜き、振り回す自分を怖がらない。それどころか、ナイフも刺さらない、バットで頭を殴打されても次の日には完治する自分の怪我を本気で心配するのだ。上司であるトムも偏見を持たず自分と接してくれる数少ない人間だが、それとは又違った瞳の輝きに戸惑いを隠せない自分自身に最初は苛立った。
 しかし帝人と会う度に感じる、少しむず痒く暖かい気持ちを自覚してからは、そんな事も無くなったようだ。

「お前、会う度に絡まれてるよな」
「……すいません」
「いや、説教するつもりはねぇんだ。ただ……」

 帝人は静雄の言葉に肩を落とした。そのつもりは無かったが、責めるような口調になってしまったのを自覚した静雄が頭の中の少ない引き出しから必死に言葉を捜す。すると先程チンピラ達を投げ飛ばす前に帝人に預けておいたビニール袋の事を思い出した。

「なぁお前、甘いもんって好きか?」
「……好きか嫌いかで言えば、好きですけど?」

 肩を落としていた帝人は、話題を突然切り替えた静雄の意図が分からず首を傾げた。

「……実はよ、会社でクリスマスケーキの売れ残りを貰って来たんだが、一人じゃ流石に無理そうでな」
「はい」
「その、……お前さえ良かったら食うの手伝って欲しいんだが」

 静雄は照れ隠しのように頬を掻きながら、愛用のサングラスを押し上げる。帝人はそんな静雄の様子に破顔すると大きく頷いた。

「はい。僕で良ければ、お手伝いさせてください」
「……そうか」

 静雄は帝人の嬉しそうな様子に胸を撫で下ろすと、預けていたビニール袋を受け取った。その瞬間帝人の華奢で頼りない指先が、静雄の骨ばった指先に触れる。その体温は今まで感じたどんな熱よりも離れがたい物のように思え、静雄はその熱ごと帝人を両腕で包み込んだ。

「静雄さん、ケーキ落っこちましたよ」
「そうだな」

 静雄が手放してしまったケーキは、見事に冷え切ったコンクリートの上に着地していた。グシャリと独特の音を立てたそれは、無残にも箱の形も変形してしまったようだ。キチンと箱詰めされていたようなので食べられない事は無いと思うが。きっと衝撃で上に乗っている飾りは崩れてしまっただろう。

「静雄さん。ケーキだけじゃ栄養が偏るので、夕飯はお鍋にしませんか?」

 静雄はもう一度「そうだな」と頷き、壊れ物を扱うように両腕にほんの少し、力を込めた。すると帝人は答えるように大きな背中に腕を回す。その体は先程大暴れした筈なのに、驚くほど冷え切っていて、帝人は自分の熱を分け与えるかのように静雄を力一杯抱きしめた。