不動と鬼道 3
「なんで、そんな顔すんだよ!」
円堂は俺を見て辛そうに叫ぶ。
俺は、自分の頬に涙がつたっていることに気が付いた。
「泣かせるために言ったんじゃないんだ・・・ごめん」
そう言って円堂は手に籠めている力を抜く。
「・・・・・目にゴミが入ったんだよ」
バレバレな言い訳をして、俺は顔を乱暴に拭った。
「悪いけど、俺、好きな奴いるから」
はっきりと円堂の目を見て言う。
どうして俺が好きなのか、なんて聞くまでもなかった。
「誰なんだ?」
俯きながら円堂が呟く。コイツ、泣いてんじゃねえだろうな。
「・・・鬼道有人」
少し躊躇いながら答えると、円堂はピクリと反応した。
「そっか・・・ありがとな」
全く顔を上げず、円堂は2階に上がって行く。
-----断るのって、結構こっちもつらいんだよな。
ズキズキ痛む心臓の辺りに触れながら、
ちゃんと好きな人を言えた自分が
少し好きになった。
「・・・聞いちゃった」
楽しげな声とは正反対に、俺の背筋がゾクリと凍る。
振り向いてはいけないという警告だ。
「どうしたの?硬くなっちゃってさ」
肩に手を置かれ、完全に動きが止まる。
「不動君・・・・・・・」
耳元で囁かれる。やばいヤバイ・・・
「君って乙女だったんだね☆」
「はぁ!?」
さっきまでの貫禄はなんだったんだ。
拍子抜けて思わず素に戻る。
「円堂君も君のこと好きだったの知ってたからさぁ
ちょっとストーキングさせてもらってたんだよね」
ヒロトは語尾を上げながら話す。
とんでもないことをサラッと言えるところが凄い。
「そしたら面白いものが見れたよ。告白されて泣くとか
可愛いすぎるんだけど。」
クスクスと上品に笑いながら、俺の方を横目で見る。
「・・・からかいに来たのかよ」
少し間を空けながら話した。
「警戒しないでよ。俺は君の力になりに来たんだ」
そう言ってヒロトは俺に手を差し出す。
「恋愛相談、いつでも受け付けるよ」
-----いや、お前、聞きたいだけだろ。
と心の中で突っ込んだ。
しかし、癪だけどコイツなら頼りになるかも、と思って
俺は決心した。
「あぁ、そんときは宜しく頼むぜ」
そう言って俺は一歩踏み出した。
「え、不動君。握手は?俺、この手どうすんの??」
ヒロトは戸惑いながら疑問符を投げかける。
「・・・またいつか」
それだけ言って俺は自分の部屋に向かう。
-----昼間あんなことされといて
誰が手なんか握るかバーカ。
ため息をつきながら廊下を歩いた。
「あ」
思わず足が止まる。
「鬼道・・・」
ほんのわずかの時間会っていなかったのに、
久しぶりに会った気がした。
鬼道は佐久間と歩いている。なにやら話し込んでいるようだったが、
こちらに気付いてくれた。
「おぉ、不動!」
佐久間が丁度良い所に、と話かける。
鬼道は気まずそうに頬を掻いた。
「き、奇遇だな」
-----べつに妬いてねーよ。
気遣ってくれたのがうれしくて思わず
笑みがこぼれる。
「今、鬼道と必殺技について考えてたんだ!今の
皇帝ペンギンをもっと強いシュートにするため
にはどうすればいいかなって」
佐久間は意気揚々に話す。
「俺とすれば練習をして完璧なものにするしかない
と思ってるんだが・・・どうだ?」
腕組をして鬼道は俺を見つめた。
・・・ちょっと思い出したじゃねーか。
少し顔が熱くなる。
「それでいいんじゃねえの。すぐにでも練習はじめるか?」
俺は佐久間に向かって言う。
「今から晩御飯だぜ?その後にしよう。不動も一緒に食べるか?
いいよな、鬼道」
佐久間は鬼道に同意を求める。
「別にかまわない」
鬼道は俺の方を見て、そう言った。
どうやら今日
残念ながら、
俺は1人になれないらしい。
作品名:不動と鬼道 3 作家名:烏丸@ツイッターしてます