あふれ出た想いは
中国が仕事で日本の家を訪れたのは、もう6時間も前の事。
この吹雪の影響で飛行機が飛ばず、中国は仕方なく日本の家に留まっていた。
「・・・帰れねーあるな。」
窓の外に顔を向けたまま、中国がぽつりとつぶやいた。
その言葉を何度聞いただろうか。
新しくお茶を入れようと立ち上がった日本は、ふとそう思った。
互いの表情は、見ることが出来ない。
飛行機が飛べないと連絡が入ってから、中国はずっと窓の外を見ていた。
今日はクリスマス。
私はクリスマスにあなたと一緒にいる事が出来て、こんなにもうれしく思っているのに。
あなたの心は、今どこに・・・?
「中国さん。」
「何ある?」
日本が声をかけても、中国は窓の外を見たまま。
まるで、そうしていれば雪が止むかのように。
「中国さん。」
日本がもう一度名前を呼ぶと、中国はいらだったように振り向いた。
「何あるか!さっさと言うよろし!」
その時、日本は自分の中の何かが、我慢していた何かが、あふれ出したような気がした。
これ以上、こらえる事は出来ないと言うように。
あふれ出た。
思いが、想いが、オモイガ。
ずっと昔から、心の中にためていた想いが。
「中国さん。」
「だから何あるか。」
立ち上がった中国に向かって、日本は笑いかけた。
まるで、時が止まったようだった。
「2人っきりですね。」
日本は美しく笑った。
そこには、中国の知らない日本がいた。
「日本・・・?」
今 日 は ク リ ス マ ス
止 ま っ た 時 間 は 、 サ ン タ さ ん か ら の プ レ ゼ ン ト