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しのひと【女性向け】

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帝人くん、面白い情報をあげよう。心配しなくても、報酬を貰おうなんて思っち
ゃいないよ。それじゃあまるで当たり屋だからね。
いいかい?俺はね、死なないんだ。
「……なんですか、それ。ギャグ?」
あ、ひどいなぁ、信じてないね?素敵に無敵な情報屋のこの俺が依頼でもない限
り、嘘の情報なんか言うわけないじゃない。
「死なない人間が、いるわけないじゃないですか」
うーん、じゃあ俺は人間ではないのかもね。ほら、どっかの規格外人間にもよく
虫呼ばわりされるし?
「……僕もユーモアのセンスないですけど、臨也さんも相当ですよね」
あはは、なにそれ。



僕は、めったに見れないこの人の寝顔があまり好きじゃない。生きてる感じがし
ないからだ。
閉じられた唇も瞼も震えることなく、静かに静かに眠る姿は睡眠の模範であるよ
うに端正だ。

何も寝てる時だけじゃない。
一番良い表現は多分、生命活動が似合わない、だ。
食事も生理現象も呼吸だってまるで不要な物に思えてくる。この人はただ、口の
端を吊り上げて朗々と話しているだけでいいんじゃないか。
だから。



臨也さんは、死なないんじゃないんじゃないですか。
「うん?」
死なないんじゃなくて、最初から生きてないんじゃないですか、って話です。
「なにそれ、俺が幽霊か何かだって話?」
嫌ですか?
「嬉しくはないよねぇ、俺は人間が好きだし、人間である俺が好きだ」
さっきと矛盾してません?人間ではないのかもって言ったのは臨也さんでしょ。
「あー、うん。あれはまぁ、撤回するよ」
撤回って……珍しい。
「だって、そんな嫌そうな顔されちゃあね。君は随分俺に死んでほしいみたいじ
ゃないか」



当たり前じゃないか。死なない人間なんていない。生きているなら死ぬんだ。
死んでほしいに決まってる。
死ぬまでは、生きててほしいに決まってる。



帝人くんは、全然わかってないよね。
俺は死なないんじゃない。死ねないんだよ。
君以外の手に掛かって、死ぬことなんてもう出来ないんだよ。

「帝人くんは俺を置いて死なないでね」
「死なない人間より長生きなんて出来ませんよ……」

作品名:しのひと【女性向け】 作家名:三郎