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broken heart

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broken heart



君は俺のことを理解してない。たまに黒いもやもやが膨らんで、君が抱く俺のイメージを壊してしまいたくなる。
君が見ている俺は嘘じゃないけど、真実全てってわけでもない。
君はそれを知らないから、俺はそれを教えてしまいたくなる。

「滝沢、くん…」

壁に押さえつけた咲の手が、今更のように戸惑う。
小さく掠れた呼び声が望む言葉を、今の俺は持たない。

「ねぇ、咲。俺だって考えたことがないわけじゃないんだよ」

ぴくり。咲の眦が不安を訴える。
そんな顔させたいわけじゃないのに、どうしてだろうね。歯止めが利かない。
咲の手に指先を絡ませて、握る。逃げられなくする為に。

「俺のしてることは全部無意味で、誰にも届いてない」
「…そん…、な…」

否定しようと緩く首を振る咲を見つめる。
たぶん、酷く冷めた瞳をしてたんだろう。
咲の表情が曇る。言葉は消える。乾いた唇と潤んだ瞳を、ただ見つめて。

「咲だけが俺のしてることを受け止めてくれて、他の誰かには何も伝わってなくて、こんなこと続けても無意味なんじゃないかって」

息がかかる程に近付いて、隠し続けてきた本音を告げる。
咲は息を呑んで、湿気る声を漏らす。

「…たきざ、わ……くん」

俺の名前を弱々しく呼んで、指先に縋るように咲の指が絡む。
怯えるような、或いは嘆くような眼差しに、唇が歪むのを止められない。

「俺はね、咲、」

潤んでいる瞳が揺らぐ。
ぐらぐら、揺らぐ。
まるで咲の気持ちを見せつけるかのように。悲鳴のように。

「それなら、咲だけの王子様で居たかったんだよ」

頬を伝う涙を舐めて、優しく優しく、囁いた。

■END

ホントは咲ちゃんだけの王子様で居たかったけど、咲ちゃんや平澤たちを放っておけなかったから今の自分がいて。
咲ちゃん達が望んだ滝沢 朗と、そうじゃない部分(一部の本心)を理解してる滝沢くんが、そのギャップに耐えきれなくなった時の話。

お付き合いいただいて、どうもありがとうございました!
( 2010.12.26. )
作品名:broken heart 作家名:妖女 哀華