二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

思想に微睡む5つの言葉 遙か3

INDEX|4ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

04 出発点が見えたのは、終わりを知った次の日だった。



 リズヴァーンは言った。
 『源流から変える』。
 運命を変えるには、源流から変えなければいけない。
 源流がどれなのかは分からない。
 最初、八葉が全員揃った夏の熊野で悲劇が起こらないようにしようしたが、それでは駄目だとリズヴァーンは静かに諭した。
 例えこの熊野で変えようとしたとしても、流れは同じままなのだ、と。
 今、望美の前で流れる熊野の川は、滔々と激しく下流に向かって下っている。
 運命もまた、あのように激しく流れていることを、望美は深く実感する。


 この世界に戻ってきた後、まず最初に感じたのは、暑い空気。
 炎による空気の熱さではなく、季節の暑さだ。
 そして、見たことがある風景。
 遠くで蝉の鳴き声。
 望美は驚きつつも、ここが熊野であることを知った。
 何故、燃え盛る京ではなく、熊野なのか。
 しかも、空気からすぐに分かるように、季節が夏である。
 望美は一体どうなっているのか、さっぱり分からなかった。
 寝床から出て、四つんばいで辺りを見回す。
 そして、どうやら朝だということもわかった。
 慌てて寝床から出て、着替える。
 震える手が、なかなか上手く動かない。
 支度もそこそこに望美は部屋を飛び出した。 
 まさか。まさか!
 そして飛び込んだ部屋。
 自分を見つめる仲間達の姿が在った。
 望美の身体から一気に力が抜けそうになった。
 まだ生きている。
 みんな、生きている。
 あの悲劇が起こる前の、熊野に『戻って』きたのだ。
 望美は思わず泣いてしまった。
 また全員に会えるとは思ってもみなかったから。
 生きている。
 自分に話しかけてくれる。
 心配する声、宥める声、困惑した声、苦笑じみた声。
 どれもが大切で愛おしいものだ。
 早く言わなければ。
 そう焦ってもなかなか言葉にできない。
 しかも、全員が理解できる話でなければいけないと、漠然にも思っていた。
 懸命に危険を伝えようとしても、言葉が上手く回らない。
 何かを悟ったリズヴァーンが、望美を諭す。
 『運命を変える力』。
 それが、この逆鱗を使うことで可能となり、そして今、望美がしたいことを叶えてくれるものでもあった。
 この逆鱗は、時間を遡ることができる。
 知らなかった以前。
 後悔を知る今。
 辿る運命は絶対変わる。
 運命を変えることで、この世界の『歴史』は変わってしまうだろう。
 しかし、望美にはそんな怖さはなかった。
 『歴史』より、『決意』の方が遥かに上回っていたのだ。
 自分は一人じゃない。
 まだみんなが生きている。
 こうして生きて会えた。
 大丈夫。
 自分は頑張れる。
 前を見つめて、戦える。
 虫の音がする静かな夜。
 何も知らない自分に別れを告げた。
 望美は別の部屋を見る。
 八葉達がいる部屋だ。
 今、ここで彼らとは別れるが、またすぐに会えるだろう。
 夜が明け、空が白く色づき始めた。
 鳥が鳴き始める。
 望美は空を見上げ、そして大きく空気を吸い込んだ。
 そして白龍の神子は、剣と逆鱗を持って、終わりの見えない運命を変える戦いに出発した。