二週目のロシアン・ルーレット
宿に泊まる際、どなたか代表で著名をお願いします、と言われ結局いつも何かと取り仕切っているユーリが書くことになった。
少し俯いて左手で自分の名前を書き出したユーリの長い髪が前にさらりと流れ、それを耳にかける動作をレイヴンは見て、何故か呆然とした。
そしてその時自分の中で思った言葉を、口の中で繰り返す。
(女みたい。・・・・・・女みたい?)
いやいやいやいや。否定するがでも何故か否定しきれないでいる自分にレイヴンは首を傾げる。
うーん、と唸り顎に手をやる。隣で微かに笑う声がしたので見ると、ジュディスが、分かるわその気持ち、とにっこり笑って言うのでレイヴンは呆気にとられた。後ろ髪をがしがしと手で掻いてジュディスに苦笑を返した後、あれ、とふと思った。
(分かるわその気持ち・・・って、ええ?)
混乱している間にユーリが振り向いて、じゃあ明日まで自由行動な、と言い、みんなそれぞれ散ってゆく。その場所に突っ立ったままいるとユーリが首を傾げて、どうかしたかおっさん、という表情はいつもの青年のものだったので、レイヴンは軽くなんでもないとかわして、身を翻して宿屋を後にした。
二週目のロシアン・ルーレット
(女っぽいわけじゃなくて、こう、なんてーの、艶っぽい?・・・・・・ん?)
お題配布元:不在証明さま
作品名:二週目のロシアン・ルーレット 作家名:水乃