はじめての君と大晦日
今日は世間で言う大晦日だ
そしてこの大東海野球部の二年寮ではいわゆる忘年会が行われている
もっとも、試合で負けた悔しさやそこから学んだことは忘れてはいけないのだが
わやわやといつもとは違うなんだか祭りのような雰囲気の大部屋の中、祭りの開催の合図が出された
「今年もお疲れ様ー!!かんぱーい!!」
カンッ キンッ
いつもの金属バットが奏でる音とは違う、ものがかすれる音
頭の回転が止まったのかフル回転しているのかコップの中身をぶちまける者もいる
彼のコップの中身が無くならないうちに早く行かなければと彼のところへいそいだ
「新道っ」
無愛想な目が俺の顔を見る
「今年はありがとうっ、来年もよろしく!新道がバッテリー組んでくれて・・・・・っていうか、俺をここに戻してくれて本当に感謝してるっ!俺、がんばるからっ、ずっとっ、新道とっ!」
今できる精一杯の笑顔と言葉で、彼に感謝を送った
嘘は何一つない、心からの『感謝』
そして彼は片手を出してこう言った
「前やった契約金のコーラ代、今年中な」
こんな時まで新道の対応はクールだ
でも俺みたいな人間を受け止めてくれる本当は優しいやつだってことも知ってる
契約金の意味を理解しないままに、素直に喜びをかみしめる
「じゃあ新道、お疲れ!」
「んっ」
キンッ
バントよりも軽い金属音が体に響く
そしてコップをおおきく振りかぶり、いっきに振りはなった
「契約金のコーラっ!」
そして忘年会はジュース掛け合い会へと変貌したのであった
作品名:はじめての君と大晦日 作家名:もかつ