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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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【表示的な意味で】年賀状背景(日音ver.)【完全版】

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「音無っ!初詣行こうぜ!」
 日向から電話でそう誘われたのは、元日の正午くらいだった。
 その時俺は、友達と初詣に行ってそのまま一緒に遊ぶという初音を送り、洗い物も済ませ、一段落ついたところだった。来年は受験勉強でゆっくりできないから今年くらいはのんびり過ごしたい。初音が帰ってくるまでやることもないし、ふたつ返事で承諾して早速出かける支度をした。

 日向と会うのは2学期の終業式ぶりだ。1年の時に同じクラスになって以来、クラスが別れた今も仲良くしてもらってる。
 日向はクラスメイトの中心にいるようなタイプで、クラス内外関係なく人気がある。俺は教室の端でその様子を眺めているようなタイプだから、正直な所なんで俺に構うのかよくわからない。でも、楽しそうな日向を見ているのは結構好きだった。たまに目が合うと笑いかけてくれるのも嬉しかった。

「でも日向が優しいのは性分なんだよな。俺が特別なわけじゃない」
 待ち合わせの神社へ向いながらひとりごちた。
 少し先に快晴の今日の空よりも深い青色の頭が見える。あと数メートルのところで、小刻みに震えながらマフラーを巻き直していた日向が俺に気づく。
「よっ!あけましておめっとさん!」
「あぁ、あけましておめでとう。今年もよろしく」
 定番の新年の挨拶をしながらも、寒さで頬も耳も赤くなっている日向が気になった。
「悪い、だいぶ待たせたみたいだ」
「そんなことないけど…じゃぁさ、音無あっためてくれる?」
「お前、コレなのか?」
 いつものやりとりに思わず2人して笑ってしまった。

 参拝後、おみくじを引いいてみたら日向が凶を引いて凹んでいたので甘酒を奢ってやった。
「じゃあ、そろそろ帰るな。初音も戻る頃だし」
 日向も同意し、神社の前で別れた。
 が、数歩進んだところで日向に呼び止められた。
「どうかしたか?」
「ああ…うん…あのさ、これ…」
やや俯き加減で差し出されたものは、俺の名前が宛先に書かれた年賀状だった。
「25日に間に合わなくてさ、今日渡せばいいかなって…そ、それだけだから!悪かったな、呼び止めて!じゃあな!」
 そう早口で言い訳のように言って去りかけた日向を、今度は俺が呼び止めた。
「日向っ…これ…っ…本当なのか…?」
 ゆっくり振り向いた日向の頬と耳は、出会った時とは別の意味で赤くなっていた。
「もし、冗談じゃなくて、本当ならさ…ちゃんと日向の口から聞きたい。そしたら俺も返事するから」
 真っ赤な顔を上げた日向が一生懸命言ってくれた言葉を、俺はお正月が来るたびに思い出すと思う。


「俺、音無のことが好きだ」