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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】王

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父親という存在に感謝するというのは至極当たり前のことだろうとは思うけれど、僕の境遇を知る人は、「そんなお父さんなんて好きになってどうするの」といわれてしまいそうだ。
 しかし、どんなに僕を利用しようとしたとしても、そしてどんなに僕を人間扱いしていなかったとしても、僕はやっぱり彼に育てられた存在であり、彼がいなければ僕は自分の人生を歩むことなどとうていできなかった。

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 僕の父親は大犯罪者でなおかつ似非思想を振りかざす大詐欺師といっても過言ではない存在だった。そして、プラズマ団の解散後は行方しれずとなっているという(僕も世間からは行方不明扱いされているけれど)。
 彼は人望もあり、金もあり、話術は巧みでありとあらゆるものに恵まれていて、彼が世界征服を目指すのは、実はロケット団のサカキやギンガ団のアカギよりも簡単にできたといえる。ロット・アスラ・ヴィオ・スムラ・ジャロ・リョクシの各賢人やダークトリニティなど彼の本来の姿を信仰していた人間が多かったのだから。そしてそれが悲しいことに彼の誤った夢への期待を加速させた。
 彼は天才だったが、天才だった故にむしろ普通の人間からは認められなかった。だから彼は彼らの下に甘んじるのを良しとせずにプラズマ団を結成しようとした。そして、建前上便宜的に使うものとして伝説のドラゴンを手に入れようとしていた。
 だが、伝説のドラゴンは、そんなに簡単に手にはいることはない。

 伝説のドラゴンは、純粋な夢を追うものにしか、つまりは綺麗な理想を語るものにしかついて支持することはない。

 そんな中で僕は、生まれたときから俗世と隔離させられた。普段から教養と哲学を学ばされた。父親が父親なのに丁寧語を使う。父親が父親なのに僕を神聖視する。僕はそれになれているべきなのに大きな違和感を覚えざるを得なかった。よその家庭の父親の姿を知らないのに、自分の父親は異端だと感じていた。
 僕は普通にそんな中でも育ち、多くのポケモンと会話し、未来を大まかながら予知し、純粋にポケモンのための解放を唱えてきた。それがすべてのポケモンにとって幸せなんだと信じて僕は活動をしてきた。
 そんな僕はある日父親が演説をするカラクサにいった。多くの人間がプラズマ団の理念をどう思うのかを知るためによくいろいろな町で行われる、父親の演説を聞いていたからだ。
 彼は決してトップではなかった。実験こそ彼がナンバー1ではあったが、組織の序列では一番上なのは…僕だった。産まれてきた子供を自分の上に置いていた。

 『なにをいっているんだろう』

 僕は自分の耳を疑った。人間の声ではないから僕はきっとそれはポケモンのそれだと感じた。果たしてそれは少年のツタージャの声だった。

 『ながねんのつきあいはポケモンをくるしめる?じゃあぼくはブラックくんといっしょにいてもしあわせになれないの?ついさっきあったばかりでここまでこころがつうじあうなかなのに?』

 ついさっき?僕はそのポケモンの過去を探った。そして、そのツタージャがその当日彼の元に届き、そしてわずかなバトルを通じて仲良くなったというのか?そんな馬鹿なことが?…今思えば、それが僕の心に揺らぎをもたらした最初の時だった。