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ふざけんなぁ!! 4

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「……サンキュ……な。お前ら……」
素直にありがたいと思った。
この時は。


なのに。


「ああ、そういや俺のバン、最新のポータブルDVD積んだんだよ。結構画面大きくてさ。メシ食い終わったら、その辺のコンビニの駐車場かどっかで、アダルトDVDでも見るか?」
「いいっすね。俺のお勧め、レンタル走って借りてくるっすよ♪」

おいおいおい。
男が四人ツルんで、密室でエッチDVD見て、何が楽しいんだ?

「嫌、俺、今日……帝人が待ってるし……」
「ああ、それなら俺がさっき、新羅の所にメールを入れておいたぞ。21時過ぎたら、竜ヶ峰は寝かせるから、もう来なくていいそうだ」
「おい、勝手なマネすんじゃねー!!」

携帯で時刻を確認すれば、とっくに21時を超えていた。
今日はもう、可愛いあいつの顔が見れない事が確定し、心がますます虚ろになった。

そんな心が折れてる状態なのに、なし崩しでバンに放り込まれ、問答無用で遊馬崎が借りてきた、アニメのエロDVDの上演につき合わされたのだが。

一本目は、平和な学園が異空間に飛ばされ、非現実な触手とかが女子高生を襲う猟奇物。二本目は、満員電車の中で、やはり女子高生相手に集団で痴漢行為を働く男達の話で。
そんなモンを「これこれ、マジお勧めっす♪」と言われたって。

俺にどうしろと!?


「お前ら、ぜってー面白がっているだろぉぉぉぉぉぉ!!」

今となっては本当に心配されたのか遊ばれたのかも判断つかないが、兎に角その夜、彼ら三人は静雄を弄りまくってくれやがりやがったのだ。


★☆★☆★


「そんで、猟奇的なアダルトアニメDVDを鑑賞し終わって、俺、開放されたのはいいんすけど、門田に貰ったエッチの指南書と避妊具、そのまま家に持ち帰っちまって……。俺、リビングのソファーベッドで毎晩寝てるから、今、そのテーブルの上に置きっぱなしになってて……」


怯えながらの長い話を聞き終えたトムは、とってもいい笑顔でぽんと静雄の肩を叩いた。


「まだ決まった訳じゃない、間に合うかもしれないだろ? ごちゃごちゃ言ってねーで、とっとと走れ!!」
「うすっ!!」


素直な彼は、トムの命令に、猛然とダッシュで駆け出していった。
そんな後輩を、生暖かな目で見送った後、彼は新しい煙草を口に咥えて火をつける。
そして、煙を吐き出しつつ、大きく溜息をつく。


「……あー、しずおぉぉぉぉぉぉ、………小悪魔な帝人ちゃんがさぁ、そこまで初心な筈ねーだろが……。恋する男は怖いっつーけど、お前ってばどこまでドリーマーなんだか、はぁ……」


エロいヌードグラビアじゃあるまいし、面白くもなんとも無い、美術室に置いてあるデッサン用の裸模型と同レベルなHOW TO本のヌードを見たぐらいで、真っ赤になるような女子高生がいるとしたら、天然記念物に指定しても良いぐらいだ。


静雄の心配は、きっと取り越し苦労で終わるだろうし、それなら家でうずうずと静雄の帰宅を待つ帝人ちゃんに、一分一秒でも早く彼を届けてやるのが上司の務めだ。

明日はきっと、上機嫌な部下に会えると信じて。
今の話題で大いに盛り上がろうと、トムはポケットに両手を突っ込み、足取りも軽く露西亜寿司へと向かった。


★☆★☆★


一方その頃、避妊具と、Hou To Sex本を発見し、リビングでぴしっと固まっていたのはセルティだった。


帝人の帰宅はサプライズだったし、そりゃ男が一週間も、一人で暮らしていたのだ。
グラビアやヌード写真、それにエロDVDとかが散乱していたとしても、苦笑交じりに帝人に見つからないよう、こっそりと片付けてやるぐらいの心積もりがセルティにはあった。


なのに、これはいくらなんでも早すぎではないか?
明らかに、ターゲット・ロック・オンされているのは帝人だ。


静雄はもう23歳だからいい。
でも彼女はまだ15歳の子供で、無理に手を出したら犯罪者になって、速攻豚箱送りである。


(静雄、お前は臨也とは違う……、私はそう信じていたのに……!! これだから男という生き物はぁぁぁ!?)


油断すれば憤怒で黒い影が噴出し、とぐろを巻いて四方八方へと飛びそうだ。
臨也という最低男に手篭めにされかけ、帝人が心に傷を負って、まだ一週間しか経ってない。なのに、彼女が心から信頼しきっている静雄が、早速帝人を食べようと、虎視眈々と狙っているなんて。


(許されない、許されないぞ静雄、私の目の黒いうちは、断じて帝人を襲わせるものか!!)


避妊具と、Hou To Sex本を、影の中にそっと押し込み、帝人を伺い見る。 


彼女はウキウキとキッチンで、昨日からお気に入りとなった、『オペラ座の怪人』のテーマ曲を鼻歌で歌いつつ、新羅宅から持ち帰った二人分の夕ご飯を、せっせと皿に彩りよく盛りなおしていて、セルティがこっそりやったお片づけに、一切気がついていないようだ。


よし。


セルティは、ぱぱっとPDAに文字を入力すると、キッチンにいる帝人に突き出した。



『私はこれで帰るが、臨也対策だ。今晩は部屋に鍵をしっかりかけ、枕元にナイフとバットを置いて、万全の体制で休むんだぞ』
「はい♪ セルティさん、ありがとうございました♪♪」
『臨也は本当に危ない奴だからな。本当に何するか判らないから、気をつけなきゃ駄目だぞ』


実は静雄も危ないのだと警告したかったが、帝人を必要以上に怖がらせたくなかったので、ぐぐっと堪える。

(帝人、お前の純潔は、きっと私が守ってやるからな!!)


帝人の小さい手がぱたぱた振られる中、可愛いお見送りを受けた首なしライダーは、背後の影から大鎌を取り出し、まっしぐらに静雄を捜してバイクを駆った。



そしてその晩、池袋の街中では、首なしライダーに散々追い掛け回され、黒バイクに轢かれまくる自動喧嘩人形の姿が、あちらこちらで目撃されたとか。



ドジっ子セルティの早とちりが解け、タイヤの痕を全身くっきりつけたバーテンが無事帰宅できた時、時刻は午前三時を回っていて。
待ちくたびれた帝人が、静雄がいつも休むソファーベットに、、夕ご飯を食べないまま潜り込んで、くーくーと安心しきった表情で眠っていたという。


作品名:ふざけんなぁ!! 4 作家名:みかる